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2018 年度 実施状況報告書

宇宙ステーションでの太陽中性子の観測

研究課題

研究課題/領域番号 16K05377
研究機関名古屋大学

研究代表者

村木 綏  名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 名誉教授 (70013430)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2020-03-31
キーワード太陽中性子 / 太陽フレア / 太陽宇宙線 / 高エネルギー太陽粒子 / 粒子加速 / GEANT4 / impulsive flare / gradual flare
研究実績の概要

最も地球から近い星である太陽は、表面で発生する現象を地上や衛星から観測できるので、様々な仮説が検証できる。それ故天体物理学と言われている。我々は太陽表面の爆発(太陽フレア)に伴って作られる非常に高いエネルギーの粒子、すなわち太陽宇宙線がどのように作られるのか長年研究してきた。本科研費では宇宙ステーションに搭載されている太陽中性子計測装置(SEDA-FIB)で取得されたデータを中心に、軟X線、硬X線、高エネルギーガンマ線及び紫外線の画像データを比較することにより、イオンがどのようなプロセスを経由して数GeVまで加速されたのか研究した。その結果、
(1)イオンが数GeVまで加速される過程は、まずimpulsive phaseで~100MeVまで一旦加速され、その後gradual modeで数GeVまで加速されるという2段の加速過程を経由していることを突き止めた。
(2)この加速過程を表す有望な理論に、impulsive phaseでは拡散サーフィン加速モデルがある。このモデルを支持する観測的証拠を何例か集積した。しかし衝撃波サーフィンモデルは、粒子の加速が1000倍までできることを保証しているが、10,000倍までの加速は難しいようである。
(3) 我々は科研費の期間中に、GEANT4を用いて太陽表面で加速されたイオンの衝突過程についてsimulationを行い、impulsive phaseでは100MeV以上の中性子とガンマ線の比 (n/γ) が~1000であり、gradual phaseでは~10であると予想した。そしてこの予測を2012.6.3に発生した超短時間フレアで、SEDA-FIBとFERMI-LAT衛星が受信した中性子とガンマ線のdataを用いて観測的に証明した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

宇宙ステーションに搭載された中性子観測装置SEDA-FIBは、2009-2018年の運転期間中に36例の太陽フレアに伴う中性子を受信した。(但し統計精度が3σ以下のものはこの中には含まれていない。)2015年12月までの解析結果はSolar Physics (2017) 292.115に報告した。その中でFERMI-LAT衛星が高エネルギーガンマ線を検出したもの11例であった。SEDAの中性子観測数が、FERMI-LATのガンマ線のおよそ3倍程度多い理由は、SEDAの中性子はイオンが核子当り100MeVまで加速されれば受信できるのに対して、FEMI-LATの検出するガンマ線はイオンが300MeV以上(~数GeVまで)加速されないと生成できないからである。もちろん両衛星のどちらかが日陰帯を通過していた場合を除けば、両者の観測率の比はより1に近づくであろう。我々はこれらの解析結果を論文にまとめて現在投稿中である。

今後の研究の推進方策

太陽表面での粒子加速過程ではimpulsive phaseとgradual phaseが存在し、impulsive phaseでは天野・星野らによる拡散サーフィン加速モデルが最有力モデルである。しかしこのモデルはまだ1次元モデルである。実際の太陽表面では磁力線の再結合過程によって放出されたjetが重なり合い孤立波(ソリトン波)が形成され、それが太陽表面の磁場に衝突する場所で作られる電場による加速が行われていると考えられる。このような逆Y字型の磁場を仮定した2次元のsimulationが今後必要である。これはプラズマ理論家の課題であろう。(計算には膨大な計算機能力が必要であろう。)またgradual phaseにおける粒子加速に関しては衝撃波加速模型が有望であるが、加速現場がCME(コロナ質量放出磁気ロープ)の先端なのか、逆Y字型の最上部なのか、まだ観測では確定していない。これを確立することが今後の観測上の課題となる。
上記の未来研究課題とは別に、2017年9月4-10日のフレア解析が近々の研究課題である。この期間に太陽活動極小期としては非常に珍しい巨大フレアが多数発生した。その中で9例にSEDA-FIBは太陽中性子の存在を確認した。一方FERMI-LAT測定器は2例高エネルギーガンマ線を観測した。現在2017.9.10に発生したX8.2のlimb flareの解析結果を発表するため準備中である。しかしこのlimb flare以外の解析は世界的にもまだ進んでいない。残りのイベントの解析も急がれる。
また2011.3.7と2012.6.3の2イベントの解析結果を現在それぞれ投稿中であるが、これらの論文が正式にレフリー付き雑誌に出版されるよう最善の努力を払いたい。

次年度使用額が生じた理由

2本の論文を投稿中であるが、両論文とも審査員とのやり取りに時間がかかり、3月31日までに完了の見通しがたたなくなった。論文出版に使用するための必要経費を残したい。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2019 2018 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] Instituto de Giofisica, UNAM(メキシコ)

    • 国名
      メキシコ
    • 外国機関名
      Instituto de Giofisica, UNAM
  • [雑誌論文] Measurement of the Electrical Properties of a Thundercloud Through Muon Imaging by the GRAPES-3 Experiment2019

    • 著者名/発表者名
      B. Hariharan, A. Chandra, S. R. Dugad, S. K. Gupta, P. Jagadeesan, A. Jain, P. ;K. Mohanty, S.D. Morris, P. ;K. Nayak, P. Rakshe, K. Ramesh, B. S. Rao, L.V. Reddy, M. Zuberi, Y. Hayashi, S. Kawakami, S. Ahmad, H. Kojima, A. Oshima, S. Shibata, Y. Muraki, and K. Tanaka
    • 雑誌名

      Physical Review Letters

      巻: 122 ページ: 105101-105106

    • DOI

      https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.122.105101

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Angular and Abundance Distribution of High-energy Gamma Rays and Neutrons Simulated by GEANT4 Code for Solar Flares2019

    • 著者名/発表者名
      K. kamiya, K. Koga, H. Matsumoto, Y. Muraki , and S. Shibata
    • 雑誌名

      European Physics Journal (ISVHCRI 2018)

      巻: in press ページ: in press

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] 高エネルギー中性子・ガンマ線からみた太陽粒子h加速についての一考察2019

    • 著者名/発表者名
      村木 綏・神谷浩紀・古賀清一・松本晴久・増田 智・柴田祥一
    • 雑誌名

      Proceeding of the 15th Spacecraft Environment Symposium

      巻: JAXA-SP-18-009 ページ: 17-25p

    • DOI

      ISSN-2433-2232 (on line)

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 高エネルギー中性子・ガンマ線からみた太陽粒子加速について--2017.9.10 flareの解析結果--2019

    • 著者名/発表者名
      村木 綏・神谷浩紀・古賀清一・増田 智・松本晴久・村木 綏・柴田祥一・内藤統也
    • 学会等名
      日本物理学会(年次大会)
  • [学会発表] GEANT4による太陽ガンマ線・中性子線の発生角度分布2018

    • 著者名/発表者名
      神谷浩紀・古賀清一・増田 智・松本晴久・村木 綏・柴田祥一・田中康之
    • 学会等名
      日本物理学会(秋季大会)
  • [学会発表] 高山観測装置を用いた初の太陽ガンマ線観測;2011.3.7 and 2011.9.252018

    • 著者名/発表者名
      村木 綏・他18名
    • 学会等名
      日本物理学会(秋季大会)
  • [学会発表] 新計算結果を用いた1991年6月の巨大太陽フレアの再解析2018

    • 著者名/発表者名
      柴田祥一・村木 綏・神谷浩紀
    • 学会等名
      日本物理学会(秋季大会)
  • [学会発表] Angular and Abundance Distribution of High-energy Gamma Rays and Neutrons Simulated by GEANT4 Code for Solar Flares2018

    • 著者名/発表者名
      K. kamiya, K. Koga, H. Matsumoto, Y. Muraki , and S.Shibata
    • 学会等名
      ISVHECRI2018(Nagoya)
    • 国際学会
  • [学会発表] 高エネルギー中性子・ガンマ線からみた太陽粒子加速2018

    • 著者名/発表者名
      神谷浩紀・古賀清一・増田 智・松本晴久・村木 綏・柴田祥一
    • 学会等名
      宇宙環境シンポジウム(東北大学)
    • 招待講演
  • [備考] 高エネルギー中性子・ガンマ線から見た太陽粒子加速についての一考察

    • URL

      ISSN 2433-2232 JAXA-SP-18-009 page 17-25, https://repository.exst.jaxa.jp/dspace/handle/a-is/906922

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公開日: 2019-12-27  

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