研究実績の概要 |
平成28年の春から実験の準備を進めて、夏前にはSPring-8においてフォトンのエネルギー1.5 GeVから2.9 GeVまでのビームを液体重水素標的にあてて、中性子標的からのπΔ生成反応のデータの収集を開始した。途中で、将来の実験で使用するための偏極HD標的の開発が入り、私がその中心メンバーであったため、データ収集は9月に一度停止したが、その後再開して年末のビームタイム終了まで順調に実験データを収集することができた。研究費で購入した真空ポンプは、水素、重水素、ヘリウムなどの軽い気体に対して十分な排気能力を発揮しており、標的ガスの真空引きを行う時にとても重要な役割を果たしている。必要なπΔ反応の数の約半分しかデータをためる事ができなかったが、本研究の1年目としては十分な結果であった。平成29年になってからは、収集したデータのキャリブレーションを行っており、データの質が問題無いことを確認した。
既に取得している陽子標的からのπΔ生成反応のデータ解析は順調に進んでおり、平成28年5月にアメリカ合衆国フロリダ州で開催されたBaryon2016国際会議においてPreliminary結果を発表した。また、平成27年10月にロシアのモスクワで開催されたEMIN2015国際会議において発表したPreliminary結果が、Proceedingsとして出版された。(Physics of Particles and Nuclei, 2017, Vol.48, No.1, pp.63-68. H. Kohri for LEPS collaboration)。最終結果を論文として発表する前に、理論計算をしてもらっている韓国釜慶大学のS.i. Nam先生との議論を結論へ持って行く必要があり、論文の発表は平成29年度になりそうである。
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