研究課題/領域番号 |
16K05382
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
森 正樹 立命館大学, 理工学部, 教授 (80210136)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 天体ガンマ線 / 暗黒物質 |
研究実績の概要 |
国際宇宙ステーションの「きぼう」曝露部に設置された宇宙線観測装置CALET のデータを解析し、天体ガンマ線を荷電粒子事象から選別し、そのエネルギーや方向を再構成して、銀河中心方向などからの暗黒物質の信号、特に重い(数百GeV~数TeV)未知粒子(Weakly Interacting Massive Particles, WIMPs)の対消滅から生じる特徴的な信号を探索し、暗黒物質の正体の解明を目指している。 2015年10月から定常的なデータ収集モードに移行したCALETの約1年5か月分のデータを用い、最上部のCHD (CHarge Detector) とIMC (IMaging Calorimeter) 上層のデータから入射粒子の電荷がゼロである事象をガンマ線として識別し、検出器上部のIMC を用いて入射粒子の軌跡を測定して入射方向を決定し、下部のTASC (Total AbSorption Calorimeter)を用いてエネルギーを再構成し、観測装置の位置・姿勢情報と時刻データも用いて、天球上の到来方向を決定し、ガンマ線の天球マップを作製した。通常の観測モードではエネルギー閾値は約10 GeVであるが、低緯度ではバックグラウンドが下がるため約1 GeVとなっているため、それぞれの閾値毎に作製したマップをフェルミ衛星のカタログ天体と比較した。Crab, Velaなどの天体が検出されていることが分かり、ガンマ線事象の識別がうまくいっていることを示すことができた。この結果を得るには早稲田大学理工学研究所・浅岡陽一次席研究員の貢献が大きかった。 データ解析と平行して、カルーツァ・クライン理論の予言する粒子が暗黒物質となっている場合にガンマ線や電子陽電子スペクトルに現れる信号の観測可能性を理論的に検討しており、一部の結果については学術誌に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は実際の観測データの解析方法を確立させ、シミュレーションとの比較を行って方法を検証することを優先して実施するとしていた。本年度は宇宙線事象からガンマ線イベントを識別することに成功し、シミュレーションとの詳細な比較が可能な段階まで来ている。
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今後の研究の推進方策 |
検出器のシミュレーションとの比較を詳細に行い、観測データが暗黒物質信号を含んでいる可能性について慎重に検討していく。CALETは順調にデータ収集を行っており、ガンマ線事象の数も観測時間に比例して増大することが期待できる。特に、重い暗黒物質に対応する高エネルギーの事象に対する信号の解析には統計例数が必要であるため、データの蓄積とともに精度が向上していくことが期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に近い2017年3月に執行した外国旅費が当初想定したより少額で済んだため、残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
物品費が当初想定より多くかかっており、旅費が不足することが予想されるため、次年度の旅費の一部に充当して使用する。
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