研究実績の概要 |
国際宇宙ステーションの「きぼう」曝露部に設置された宇宙線観測装置CALETのデータを解析し、天体ガンマ線を荷電粒子事象から選別し、そのエネルギーや方向を再構成して、銀河中心方向などからの暗黒物質の信号、特に重い(数百GeV~数TeV)未知粒子(Weakly Interacting Massive Particles, WIMPs)の対消滅から生じる特徴的な信号を探索し、暗黒物質の正体の解明を目指している。分厚いカロリメータを有するCALETは、高エネルギーガンマ線に対し高いエネルギー分解能を有する点を活用することができる。 本年度は、早稲田大学やルイジアナ州立大学の共同研究者とともに、CALETカロリメータの観測データを用いたガンマ線の解析方法を確立し、フライトデータから銀河系拡散ガンマ線やCrab, Vela, Gemingaなどの天体を解析し、フェルミ衛星で得られていた結果と矛盾のない結果を得た。この結果をまとめた論文と、LIGO/VIRGOで報告された重力波イベントに対し、ガンマ線対応天体を探索して上限値を求めた論文を学術誌で発表した。後者の結果については国際会議COSPARや日本物理学会などでも講演を行った。また、これらの成果を基に、蓄積している統計量の向上を待ちながら、暗黒物質信号の探索の解析準備を進めている。 また、CALETの主目的である宇宙線電子(ここでは陽電子も含む)は、荷電を持つ以外ガンマ線と同様の電磁相互作用による粒子シャワーとして観測されるため、解析方法には共通点が多い。宇宙線電子の4.8 TeVまでのエネルギースペクトルを延長して求めた論文に貢献した。
|