研究課題/領域番号 |
16K05389
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
中村 勇 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 助教 (70391703)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 光検出器 / 半導体光検出器 / 紫外線 |
研究実績の概要 |
本研究は、半導体光検出器 SiPM(MPPC等)に異なる波長の弱い光(単光子相当)を入射しその時間応答を測定することにより、異なる位置(深さ)で発生したキャリアが増幅領域に到達する機構を調べる事を目的としている。紫外領域の光はシリコンの吸収長が非常に短いので、極表面に近いところでキャリアを生成する。この位置での電場は非常に小さいので、電場によるドリフトにより増幅領域に到達するとは考えづらく、拡散により到達するものと想像されている。もしそうならば、増幅領域にたどりつくのに、時間がかかり測定が可能となる。 研究初年度においては既存のレーザーシステムの復旧と調整、および、通常のセンサーを使っての時間応答測定のセットアップ作業を行った。 二年目の29年度は、浜松ホトニクスより、紫外線領域に感度のあるセンサーとそれと同形状の通常のセンサーを購入し、レーザーシステムでデータを取得することと、真空紫外領域での測定を行うためのアルゴンシンチレーターでの測定を開始する予定であった。 前者のレーザーシステムでの測定はレーザーシステムのトリガーに同期した波形取得により行い、有効なデータを取得できた。 後者は当初早稲田大学寄田研の液体アルゴン検出器でのデータ取得を計画していたが、より扱いが容易で同じ波長の発光がある気体アルゴンの使用を勧められ、気体アルゴンの検出器(チェンバー)の製作の準備を行っていた。まだ、製作にはこぎつけていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
気体アルゴンシンチレーターを使った真空紫外光の検出を行うことに方針を転換してから、ガスチェンバーの製作の準備に入ったが、職務で行っているBelle2実験の開始が近づき、その作業を優先していたため十分な作業時間が得られなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は気体アルゴンシンチレーターを使った真空紫外光による測定を行う。 気体アルゴンは、高エネルギー実験でよく使うドリフトチェンバー用のガスが流用できるので、入手は問題ない。 センサーの時間応答はチェッキングソースにより発生したシンチレーション光を、発光点近くに置いた二個のセンサーで同時に観測しその観測時間差で推定する。片方のセンサーを近くに、もう片方を遠くにおいて入射光量を変え、それぞれをトリガー検出用と少数光子測定用にする計画である。 実施に必要なガスチェンバーの設計をなるべく早く終えて製作に回し、測定を実現したい。 測定系においては昨年度まで使っていた波形取得型の読み出し装置がほぼそのまま利用できるので問題ない。
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次年度使用額が生じた理由 |
未使用額が生じた主な理由は、センサー購入の費用が思ったよりかからなかったのと、別のユーザーがレーザーシステムを使うために保守を行い、本予算からの出費が必要なくなったからである。 研究を進めるうちに、可変波長レーザーシステムより使いやすい、単波長の光源を購入するのが良いと感じているので、いくつか購入する予定である。
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