研究課題/領域番号 |
16K05390
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
市川 雄一 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 専任研究員 (20532089)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 不安定核 / 磁気モーメント / スピン |
研究実績の概要 |
中性子過剰核75Cuの励起状態の核磁気モーメント測定実験を行った。実験は理化学研究所RIBFにて行い、分散整合二回散乱法を一次ビーム238U、二次ビーム76Zn、三次ビーム75CuというRIビーム生成過程に適用することで、およそ30%にものぼる非常に大きなスピン整列度を持つ75Cuビームの生成に成功した。スピン整列核を磁場中で歳差運動させ、その脱励起ガンマ線の放出角異方性の時間変化から磁気モーメントを導出することができるが、本測定においては、大きなスピン整列の実現によって75Cuの66keVの励起準位からの脱励起ガンマ線に対して5σの信頼度で歳差運動を観測するに至った。有意な歳差運動の観測という事実からこの66keVの準位のスピンパリティが3/2-であることを同定した。(ほかのスピンパリティの候補であった1/2-の場合は原理的にスピン整列を生成することができず、歳差運動を観測できないため。)観測した歳差運動スペクトルの周期からこの3/2-励起状態の核磁気モーメントの値を初めて決定することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
分散整合二回散乱法の適用により、30%という予想以上に大きなスピン整列を持つRIビームの生成に成功し、目的とする75Cuの励起状態の核磁気モーメント測定に成功したため。
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今後の研究の推進方策 |
得られた磁気モーメントの値を最新の殻模型理論計算と照らし合わせることで、当該励起状態の軌道配位、およびスピンの構成要素(陽子・中性子の核子スピン・軌道角運動量)を解析することが可能である。この解析を通じて、中性子過剰なCu同位体で起こっている殻構造進化について議論する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予算は主に、75Cuの核磁気モーメント測定実験における (i) ビームのスピン整列度最大化と、(ii) ガンマ線測定による歳差運動スペクトル取得の効率化に使用する予定であった。当該実験が当初より早く行うチャンスに恵まれたため、測定に不可欠であり、かつ比較的早急に対策が可能であった (i) について主に予算を使用した。
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次年度使用額の使用計画 |
行った75Cuの磁気モーメント測定実験では大きなスピン整列度を得ることができた。75Cuの磁気モーメントから議論できる殻構造進化の詳細は今後他の不安定核に対しても有効となることが予想される。その測定においては、上記(ii)に記した測定の効率化も不可欠であるため、今後を見据えて行っていく予定である。
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