研究課題
本課題では、光励起による相転移制御を基盤とした光機能素子の開発を目標に見据え、分子性導体薄片試料を対象とし、電子構造変化ダイナミクスの観測および、そのメカニズムの解明を目指した。その過程において昨年度(平成29年度)、光励起条件変化による物性制御という世界的に例を見ない新規の現象について研究の進展が見られた。この事から、本年度(平成30年度)においては、年度初頭に立てた推進方策に従い、上記現象の解明を進めていく事に重点を置いた。この方針のもと本年度は、スピンクロスオーバー複合体試料の光誘起効果について、高温高スピン相および低温低スピン相それぞれにおいて、光誘起状態の確認および、その電子状態等について光学スペクトルから明らかにする事を試みた。高温高スピン相での光誘起状態については、時間分解分光測定による過渡状態光学スペクトルの測定に成功したが、その状態の同定にはいまだ至っていない。低温低スピン相での光励起状態については、赤外反射スペクトルの測定にH29年度のうちに成功していたが、その温度変化の詳細の測定から、光誘起状態の寿命が非常に長い事が判明し、現有の時間分解分光測定装置では光誘起ダイナミクスの測定が困難であるとの結論に至った。そこで、光誘起準定常状態の電子格子構造の解明に焦点を絞り光学的測定を行った。また、光照射下でのX線構造解析にも挑戦し、光誘起状態の構造に関する情報を得る事に成功した。光学スペクトル及びX線回折の結果を併せると、低温低スピン相での光誘起状態は、平衡状態での低温相高温相とは一致しない光誘起状態特有の状態である事が示唆された。これ以外にもいくつかの新規物質の探索を続けており、一部は国内学会にて報告済みである。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 4件)
Applied Sciences
巻: 9 ページ: 1174
10.3390/app9061174
日本物理学会誌.
巻: 73 ページ: 864