研究課題/領域番号 |
16K05401
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
宮丸 文章 信州大学, 学術研究院理学系, 准教授 (20419005)
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研究分担者 |
中西 俊博 京都大学, 工学研究科, 助教 (30362461)
中田 陽介 信州大学, 先鋭領域融合研究群環境・エネルギー材料科学研究所, 助教(特定雇用) (50745205) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | メタマテリアル |
研究実績の概要 |
本研究は,電磁波の波長よりも小さい構造物の集合体におきまして,マルチ周波数共鳴を観測するとともに,それをテラヘルツ領域の吸収体へ応用することを目指しています。昨年度までに,計算機シミュレーションにより,結合共振器型メタマテリアルと呼ばれる基本構造をいつくか提案し,その電磁応答特性を調べました。その結果,例えば1つのユニットセル内に5つの分割リング共振器を配置させた構造において,複数の異なる周波数に共鳴特性が観測されました。 本年度は,計算機シミュレーションで得られた電磁応答特性を実験的に確認するため,実際にメタマテリアルの作製を行いました。メタマテリアルの試料は,レーザー加工装置を用いて金属薄膜をパターニングすることにより行いました。1つのユニットセル内に5つの分割リング共振器が配置されています。各分割リング共振器には1箇所ギャップが空いており,5つの分割リング共振器のギャップの相対的な方向の組み合わせを変えることにより,メタマテリアルの電磁応答特性が変わります。今回,例えば,計算機シミュレーションで複数の周波数で共鳴が見られるメタマテリアル構造の試料を作製しました。電磁応答特性の測定は,透過型のテラヘルツ時間領域分光装置を用いました。その結果,実験においても同様の周波数において,共鳴的な透過ディップが観測され,そのスペクトルは計算機シミュレーションと比較的良い一致を示しました。 またメタマテリアル構造を用いたテラヘルツ波吸収体の計算機シミュレーションや試料の作製も行いました。メタマテリアル構造を用いた吸収体は,基板を挟んでメタマテリアル構造と金属膜層で構成されます。実際に試料を作製し,反射型テラヘルツ時間領域分光装置を用いた反射特性の結果から,複数の周波数で共鳴的な吸収特性が確認されました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,昨年度に計算機シミュレーションにより得られた電磁応答特性を,実際に試料を作製することにより実験的に確認することを課題としてきました。レーザー加工により試料を作製し,その透過特性を計算機シミュレーション結果と比較したところ,比較的良い一致が確認されました。 またテラヘルツ波の吸収体への応用を目指し,メタマテリアル構造を用いた吸収体試料の作製も行いました。この試料において,マルチ周波数で共鳴的な吸収特性が確認されました。以上のことより,本年度は概ね順調に進展しているものと考えています。
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今後の研究の推進方策 |
メタマテリアル近傍における電磁波の振る舞いをできるだけ詳細に調べることは,電磁応答特性のメカニズムを理解する上で重要であると考えています。最終年度では,共鳴特性が観測される周波数において,メタマテリアル近傍での電流分布や電磁波の分布などを調べることにより,共鳴特性のより詳細な状況を把握することを考えています。 また,できるだけ幅広い周波数領域において,マルチ周波数の共鳴特性が得られるメタマテリアル構造を見出すことも目指したいと思います。そのために,マルチ周波数で共鳴特性が得られるような他の構造を模索していきたいと思います。具体的な方針としまして,高周波数側に共鳴が現れるようなメタマテリアル共振器と結合させることなどが考えられます。このようなメタマテリアル構造により,現在確認されているよりも,よりブロードバンドな領域で共鳴的な電磁応答特性が観測されることが期待できます。
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