研究課題/領域番号 |
16K05404
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
野上 由夫 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (10202251)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 電荷密度波 / 低次元物質 / 放射光 / 強磁場 / 構造物性 |
研究実績の概要 |
本研究の主力装置である、磁場中構造測定装置を改良し、極低温強磁場下でも安定動作を可能にした。昨年度は、冷却方法を改善し2.5Kの極低温測定可能な一号機を作成したが、熱流入を抑えるため薄肉材料を使用した。このため7T程度の磁場では安定して測定に成功し、磁場中でのCDW構造の撮影に成功したが、さらに強磁場では応力歪みでクライオスタットが変形し撮影が難しかった。 このため本年度は設計を改良し、熱流入を抑えた状態でも、応力変形がすくないクライオスタットにし、10Tにおいても安定に測定できる装置の作成に成功した。この改良により、この系での安定した極低温強磁場構造物性測定が可能になった。 また、希土類低次元物質RNiC2において整合および不整合超格子構造の結晶構造と電子構造の研究を行った。RNiC2においては不整合超格子と整合超格子の二種類の変調構造が知られているが、GdNiC2においては、磁場下の物性変化と不整合超格子波数変化が謎であったが、抵抗測定や開発した磁場中構造測定装置さらにはPFの放射光を使用した構造測定により、反強磁性ポテンシャルの影響により超格子波数が変化し、その結果として大きく抵抗が変化することを明らかにした。またNdNiC2では極低温強磁場下での抵抗減少に関連し、当該領域でのCDWの変化を撮影し始めている。さらにRNiC2においては、純良単結晶による超格子構造解析と超格子を含めた電子構造を行い、整合超格子下でフェルミ面付近での状態密度の減少を見出し、これまで知られていた不整合CDWだけでなく、整合波数の超格子もCDWとみなせ、CDW-CDW競合が起こっていることを示した。 このほか、二種類のCDWが存在するRTe3について、系統的に単結晶作成を進め、すでにGdTe3、TbTe3、DyTe3などで良質の単結晶を得て、既に極低温輸送特性測定をおこなっている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
極低温磁場中構造測定装置が安定に使用できるようになった。 今まで謎であった、GdNiC2の磁場下での物性変化、超格子波数変化の詳細とその機構を解明した。また他のRNiC2のCDW構造物性についても知見の進展があった。 来年度本格的に構造物性研究予定のGdTe3、TbTe3、DyTe3などで良質の単結晶を得て、既に極低温輸送特性測定をおこなっている。
|
今後の研究の推進方策 |
良質な希土類低次元物質作成のノウハウ、および純良単結晶は蓄積されているので、今後もさらに多くの希土類について純良単結晶測定を行い、輸送測定や磁場中の構造物性の測定を行う。 磁場中構造測定装置を2.5K10Tまで極低温強磁場化したことにより、ほとんどの希土類についてRKKY相互作用による磁気転移点より下まで冷却が可能になり、数多くの物質での磁気秩序と構造との関連が測定可能になった。これを最大限に生かして、希土類低次元物質のCDWと磁気秩序との全般的な相関を調べ、統一的な磁気秩序とCDW構造との相関とそこで生ずる交差物性の理解につなげる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 極低温強磁場構造測定装置は2.5Kまで冷却可能であるが、大量にヘリウムを消費する。その代金が必須になる。本年度は装置の改造をまず進め安定に動作可能にし、次年度に測定をより多くすることにした。よって、この装置の改造完了まではできるだけ研究費を節約して、完成後に装置をフル駆動して、主としてヘリウム代にあてることを見込んでいたためである。 (使用計画) これまでの計画書に記入した試料作成用消耗品などに加え、液体窒素代、ヘリウム代を約120万円使用予定である。
|