研究課題/領域番号 |
16K05410
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研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
岡野 泰彬 分子科学研究所, 技術課, 技術職員 (00393819)
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研究分担者 |
鹿野 豊 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任准教授 (80634691)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | コヒーレントフォノン / 光物性 / 超短パルス光 / 誘電率 / 量子ダイナミクス |
研究実績の概要 |
コヒーレントフォノンはフォノンダイナミクスを実験的に直接計測する方法として、半金属、半導体、超伝導物質など多くの物性研究に用いられている。しかし、複数の機構の混在が理論的に示唆されるなどコヒーレントフォノンの生成機構については必ずしも明確にはなっていないのが現状である。本研究では、これまでコヒーレントフォノン計測に用いられてきたフェムト秒過渡反射率測定法を拡張し、位相差計測法の開発と実証を行い複素誘電率変化の直接的測定を試みる。さらに、得られたデータより原子の変位を理論的に再構築することで、コヒーレントフォノン生成過程を原子の動きとして実験的に明らかにすることを目的としている。本研究は、平成28年度より引き続き、測定装置の設計・製作およびデータの取得まで一貫した実験的研究を担う研究代表者の岡野と、測定データから原子の動きを再構築する理論部を担当する研究分担者の鹿野で研究体制を構築している。 平成29年度は、昨年度の課題であったノイズ対策を進めるとともに計測系の構築および安定化を進めた。また並行して、昨年度構築したコヒーレントフォノンの生成・検出過程に関する理論を拡張し、実験データから位相推定を行うための解析プログラムを作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験系の開発においては、平成28年度より問題となっていた測定室内の空調によるノイズに対して測定系全体を遮蔽するカバーを製作し対策を施した。さらに、干渉計測に影響を与える室内温度変化への対策として、水冷ブレッドボードを組み込み測定データの安定化を試みた。今後は白色干渉による安定な位相差計測の実証をさらに進め、コヒーレントフォノン測定系に応用していく。 理論の面では、平成28年度に整備した瞬間誘導ラマン散乱によるコヒーレントフォノン生成および検出方法に関する理論を拡張し、検出の観点に着眼した理論を構築した。昨年度に引き続き東京工業大学科学技術創成研究院の中村研究室と共同し、ダイヤモンドにおけるコヒーレントフォノン現象を中心に理論と測定の対応関係についての議論を進め、ダブルパルス制御による位相推定法の観点から検証を行った。その結果を学術論文としてarXiv(arXiv:1712.07337 [cond-mat.other])に公開し、国際会議での発表(QNO2018)および学術雑誌への投稿を行った。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は研究プロジェクト最終年度となるが、これまでに生じた技術的な問題に関して解決の見込みがたったので、それを着実に実行し所望の研究結果を得ることが重要であると考えている。そして、研究成果のとりまとめに関しても同時並行し行っていくことが重要である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者の鹿野が平成29年度4月、平成30年度4月と1年ごとに異動することとなったため、研究基盤の構築に時間を要し繰越金が生じた。繰越額としては少額であるため、平成30年度の旅費に充当し今後の研究成果発信に使用する計画である。
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