研究実績の概要 |
ナノトンネルを内包するホランダイト型化合物の合成およびトンネル内へのカチオン導入を行った。(1)Mnを骨格構造に持つA_x_Mn_8_O_16_ (A= Ba, Ca:トンネル内カチオン)について述べる。前駆化合物α-MnO_2_を非磁性カチオンの硝酸化物と混合し、固相反応させることで、トンネル内へのBa,Caカチオンの導入に成功しているが、さらに合成条件(反応温度・時間)を最適化することで均一な単相試料を得た。また同一条件でカチオンを導入しないコントロールを作成し、両者を比較することで確かにカチオンが導入されていることを確認した。様々なカチオン量を導入した試料の格子定数を測定することで、カチオン量に対する骨格構造変化の系統性を見出し、その原因について考察した。先年度に引き続き、得られた化合物の電気抵抗測定・磁化測定等の物性測定を行ったが、期待した新規量子相は見つかっていない。 (2) Ru、Vを骨格構造に持つA_x_Ru_8_O_16_、A_x_V_8_O_16_の合成を試みた。前者は先行研究に従い一定のカチオン量を含む系の合成に成功したが、カチオン量を外的に制御するには至っていない。後者について、ホランダイト類似の結晶構造をもちトンネル内にカチオンが存在していないとみなせるVOOHなどの作成を、水熱合成法により試みた。(3) NMRによる微視的測定を視野に入れ、比較も兼ねてあらかじめRuを含むペロブスカイト型化合物CaCu_3_(Ti_x_Ru_1-x_)_4_O_12_のNMR測定も行った。金属絶縁体転移を起こす組成付近で二相共存のあり方を微視的に評価した。
|