研究課題/領域番号 |
16K05419
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
坂井 徹 兵庫県立大学, 物質理学研究科, 教授 (60235116)
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研究分担者 |
中野 博生 兵庫県立大学, 物質理学研究科, 助教 (00343418)
利根川 孝 神戸大学, 理学研究科, 名誉教授 (80028167)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | スピンギャップ / ギャップレス / フラストレーション系 / スピン液体 / カゴメ格子反強磁性体 / 三角格子反強磁性体 |
研究実績の概要 |
カゴメ格子反強磁性体のスピンギャップ問題について、従来の大規模数値対角化と有限サイズスケーリングによる解析ではギャップレスという結論であった。これはU(1)ディラックスピン液体の理論やそれを仮定した変分法による解析と同じ結論であるが、密度行列繰り込み群法やmulti-scale entanglement renormalization ansatz (MERA)法による計算では、有限のスピンギャップの存在が結論されており、まだ論争が続いている。そこで本研究では、スピンギャップの有無を決定する新しい手法として、磁化率の有限サイズスケーリングによる解析を提唱した。これをカゴメ格子反強磁性体に適用したところ、ギャップレスという以前の結論をサポートする、より強い証拠を得た。さらに、この手法を同じフラストレーション系の三角格子反強磁性体に適用したところ、やはりギャップレスという結論を得た。三角格子反強磁性体は従来からギャップレスと信じられており、今回提唱した新しい手法の正当性を強くサポートするものとなった。今後は、この新手法を他のフラストレーション系にも適用して、スピンギャップ問題を解明する予定である。 一方、最近合成された、歪んだ三角格子反強磁性体の物性を理論的に研究するため、歪んだ三角格子反強磁性体の理論模型に大規模数値対角化を適用して理論的に解析した。その結果、歪みの大きさによっては、従来知られている120度構造の長距離秩序相と飽和磁化の3分の1の自発磁化を持つフェリ磁性相の間に、中途半端な磁化を持つ新しいフェリ磁性相が現れることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大規模数値対角化により計算された磁化率に有限サイズスケーリングの手法を適用してスピンギャップの有無を解明する新しい手法を確立し、カゴメ格子反強磁性体がギャップレスであることを強くサポートできた。
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今後の研究の推進方策 |
大規模数値対角化により有限系の磁化率を計算し、これに有限サイズスケーリングの解析を適用して、フラストレーション系のスピンギャップ問題を解明する新しい手法を確立したので、今後はこの手法を応用して、さまざまなフラストレーション系のスピンギャップの有無を解明する予定である。また、フラストレーション系におけるジャロシンスキー・守谷相互作用やg-テンソルの異方性に起因した、電子スピン共鳴の禁制遷移を利用してスピンギャップ問題を実験的に解明することを目的として、禁制遷移の選択則を求めるための数値計算コードの開発に着手する予定である。
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