研究実績の概要 |
昨年度、申請課題の選択同位体置換による新奇超伝導相を持つlambda-(BETS)2GaCl4の13C-NMRを用いた研究で13Cという電子状態を調べる上で最適なプローブにより、過去の研究で明らかになっていなかった反強磁性揺らぎの存在やそのが抑制されてFermi液体状態へクロスオーバーする過程を発見し、さらに超伝導転移直上でSDW揺らぎによるものとおもわれる 1/T1T の増大を観測した。このことは、超伝導相に隣接するSDW相の存在が示唆られる。そこで低温で金属-絶縁体転移を起こすlambda-(BETS)2GaCl3.25Br0.75 塩を作成し13C-NMRを行った。その結果、 1/T1T MI転移温度での発散と低温でのピークの分裂を観測しこの塩の低温の電子状態がSDW状態であることを明らかにすることができた。この塩は加圧するとlambda-(BETS)2GaCl4と同様の超伝導をしめすことにより、lambda-(BETS)2GaCl4の超伝導発現メカニズムにSDW揺らぎが関与している可能性をしめすことができた。 昨年度の成果である2次元電子系の面間の相互作用を遮断している絶縁層での69Gaの信号の検出から、69Ga,71Ga-NMR の温度変化の実験を行った。lambda-(BETS)2GaCl4の超伝導に関して電荷揺らぎもモデルも提唱されている。2つのデータを比較することによりI=1/2の13Cでは不可能だった電荷揺らぎの観測が可能である。結果は、低温の 1/T1Tの挙動は、69Ga,71Gaの磁気回転比で説明ができ、明確な電荷揺らぎは検出できなかった。この結果も上記のSDW揺らぎの寄与をしさするものである。
|