研究課題
当研究の目的は、これまで多彩な強相関電子系の舞台となって来た希土類(R)六ホウ化物RB6及び十二ホウ化物RB12で、未だ作成されていない空白化合物を、高圧合成の手法により創成する事である。常圧下では未だ作製できてないが、CeB12は近藤格子で重い電子系と期待され、多極子秩序、近藤半導体、超伝導、トポロジカル物性の出現も予想される。PrB12にも多極子秩序と超伝導が絡んで発現する期待がもたれ、TmB6は価数揺動や非フェルミ液体,量子臨界現象も想定される。このため、申請者はドイツ製1000トン荷重型の高圧合成装置を導入し、学内プロジェクトチームも作りながら、その立ち上げを進めて来た。初年度の28年度には、最大17GPa、温度2000度の環境を作り出すことに成功し、この環境で、(1)多段磁化を示す純良TbB12の作成、(2)SmB12の創成条件確立、(3)近藤半導体YbB12の2価置換合金の合成に初めて成功等の成果をあげることができた。自前の高圧装置の立ち上げは順調に推移していると言える。このノウハウの延長に、当初に目的物質としてあげたCeB12, PrB12, TmB6の合成につなげていく。TmB6に関しては20-25GPaの高圧条件を達成できる、愛媛大の装置(3000トンプレス)を使用して(Ca,Sr)TmB6の合成に取組んだが、RB6相の収率は上がっているものの、まだ温度と圧力の関係が不明であり、引き続き単相化条件を探る必要がある。CeB12, PrB12は30-40GPaの超高圧条件が必要であり、その環境実現を策定している。当方の高圧合成装置の独自のノウハウは着実に確立して来ており、学内プロジェクトを通じて更なる高圧合成を手広く広げてきた。年度末には各地の高圧合成の情報を交換する研究会も開催し、今後の計画推進に役立てることができた。
2: おおむね順調に進展している
高圧装置の立ち上げは、高圧合成の専門家からは順調に進んでいるという評価を得られている。よって条件確立は順調な進度で進んでいると言える。消耗品が、結構ハイコストになっているのは予想外であったが、学内予算等の補助により、しのげている。更には高圧合成、高圧下測定、量子ビーム研究者などの合同研究会も開催でき、情報交換やコミュニティの形成という副産物が発生したことで、今後も多くの進展が期待される。最終目標物質の取り組みは、20GPa以上の高圧を必要としていることもわかって来たので、置換合金化の手段により、それらの物質の合成を新たに計画として取り入れて行くべきと明確な展開像が上げられた。
近藤半導体YbB12のCa,Sr2価の置換合金作製に成功したことで、これらの作成に力を入れて行く。これは伝導電子数の制御に通じ、近藤半導体のエネルギーギャップ形成機構解明に新たな視点を導入することができると期待する。高圧装置は更なる物質開発範囲を広げる為、多くの研究者にも門戸を開いて行く。30GPa以上の超高圧合成が必要なことが再確認できた、CeB12、PrB12、TmB6などはこれらの管球を実現できる外部との協力(愛媛大、SPring8, 東工大)を推進していく。また中性子などの量子ビームを駆使したこれらの物性解明を、関係期間と協力して進めて行く。
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すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件) 学会発表 (24件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (3件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
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