• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2018 年度 実施状況報告書

超伝導体母相における強誘電的金属状態の起源

研究課題

研究課題/領域番号 16K05434
研究機関東京工業大学

研究代表者

山浦 淳一  東京工業大学, 元素戦略研究センター, 特任准教授 (80292762)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2020-03-31
キーワード鉄系超伝導 / 強誘電金属 / 構造ゆらぎ
研究実績の概要

本研究は、水素置換鉄系超伝導体LaFeAsO1-xHxの高ドープ側で見い出された、新しい超伝導母相の起源を探ることを目的としている。通常、超伝導は母相のゆらぎを電子対形成の主な手段として用いており、母相は、その揺らぎが目に見える形で現れたものと考えられている。従って、母相の詳細な起源を調べることで、超伝導の本質に迫ることが可能である。本年度は、前年度に行なったX線吸収端近傍微細構造実験による局所構造実験の解析を精密に推し進め、超伝導母相のゆらぎが母相の長距離秩序よりはるかに高い温度から存在すること、そして、母相が消失し超伝導が出現する領域においても、そのゆらぎが存在することを発見した。これまで、鉄系超伝導体では、スピンゆらぎと軌道ゆらぎが主たる起源として議論されてきたが、格子のゆらぎとも言うべき起源が存在することを示唆する結果となった。さらに、強磁場において上部臨界磁場を測定し、非常に大きな臨界係数を示すことを見い出した。低ドープ側のよく知られた母相と、新しい高ドープ側の母相では、起源が異なることが推測されるため、超伝導の基本的な性質である上部臨界磁場にも大きな違いが出現すると考えている。現在、詳細な解析を進め、他の物質との比較をおこなっているところである。
さらに、研究をより広い範囲で展開するため、鉄系ラダー系として初めて超伝導になったBaFe2S3の高圧下構造を精密に解析し、異常に大きな格子収縮と格子変形を観測した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初、見い出すのが挑戦的であると考えられた現象であるが、精緻な実験によって、その存在を明らかにすることが出来た。その結果を受けた次の実験も、非常によい結果が得られている。従って、順調に推移しているものと考えている。

今後の研究の推進方策

強磁場における結果の解析を推し進め、本系における重要な特徴を見い出すことを第一優先課題としている。この解析により、低ドープ側のよく知られた母相と、新しい高ドープ側の母相の性質の違いが、超伝導相にも現れているということを見い出せると推測している。さらに次の方策として、光照射で励起状態を誘起し、光相転移を引き起こす実験を検討しているところである。これにより、母相の基底状態と励起状態での性質の違いを見い出すことができる。

次年度使用額が生じた理由

補助事業費を活かした研究テーマが順調に進行し、学会発表、及び、論文発表も十分行なうことができた。その過程で、より精細で新しい観点の実験を計画したが、装置の設計、選定が遅れ、実施のための期間が少なくなってしまった。この計画変更に伴い、執行を予定していた予算の一部が必要なくなると同時に、新たな装置の完成に資金が必要になった。そのため、次年度使用額として繰越を行なった、使用計画は、新たに計画している光照射用装置の作製を行い、本研究を完結させたいと考えている。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2018

すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] High-pressure Raman study on the superconducting pyrochlore oxide Cd2Re2O72018

    • 著者名/発表者名
      Y. Matsubayashi, T. Hasegawa, N. Ogita, J. Yamaura, and Z. Hiroi
    • 雑誌名

      Physica B

      巻: 536 ページ: 600-603

    • DOI

      10.1016/j.physb.2017.10.030

    • 査読あり
  • [雑誌論文] High-pressure crystal and electronic structures in iron-based ladder superconductor BaFe2S32018

    • 著者名/発表者名
      K. Kobayashi, S. Maki, Y. Murakami, Y. Hirata, K. Ohgushi, and J. Yamaura
    • 雑誌名

      Superconduct. Sci. Technol

      巻: 31 ページ: 105002:1-6

    • DOI

      10.1088/1361-6668/aad790

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Gapless magnetic excitation in a heavily electron-doped antiferromagnetic phase of LaFeAsO0.5D0.52018

    • 著者名/発表者名
      H. Tamatsukuri, H. Hiraka, K. Ikeuchi, S. Iimura, Y. Muraba, M. Nakamura, H. Sagayama, J. Yamaura, Y. Murakami, Y. Kuramoto, and H. Hosono
    • 雑誌名

      Phys. Rev. B.

      巻: 98 ページ: 174415:1-6

    • DOI

      10.1103/PhysRevB.98.174415

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Structural Insight into Charge Transfer Phase Transition for Unique Iron Mixed-Valence Complex (n-C3H7)4N[FeIIFeIII(dto)3] with 2D Honeycomb Network2018

    • 著者名/発表者名
      M. Itoi, A. Okazawa, J. Yamaura, S. Maki, T. Komatsu, N. Kojima, I. Maurien, E. Codjovi, K. Boukheddaden. and F. Varret
    • 雑誌名

      Inorg. Chem.

      巻: 57 ページ: 13728-13738

    • DOI

      10.1021/acs.inorgchem.8b02211

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] ヒドリド誘起の超伝導をプロトンのトンネリングで観測する2018

    • 著者名/発表者名
      山浦淳一
    • 学会等名
      第3回 固体化学フォーラム研究会
  • [学会発表] BiFeO3における傾角反強磁性相の新奇電気分極2018

    • 著者名/発表者名
      河智史朗, 木下雄斗, 三宅厚志, 伊藤利充, 宮原慎, 山浦淳一, 徳永将史
    • 学会等名
      日本物理学会 年次大会
  • [学会発表] 結晶構造解析とDFT計算による鉄混合原子価錯体(n-C3H7)4N[FeIIFeIII(dto)3]の光誘起電荷移動相転移の可能性の検討2018

    • 著者名/発表者名
      糸井充穂, 岡澤厚, 山浦淳一, 真木祥千子, 小松徳太郎, Isabelle Maurin, Epiphane Codjovi, Kamel Boukheddaden, 小島憲道
    • 学会等名
      日本物理学会 年次大会
  • [学会発表] 超強磁場高周波透過法によるCd2Os2O7の磁場誘起絶縁体金属転移の探索III2018

    • 著者名/発表者名
      三田航平, 山浦淳一, 廣瀬陽代, 廣井善二, 松田康弘
    • 学会等名
      日本物理学会 年次大会

URL: 

公開日: 2019-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi