研究実績の概要 |
当初計画に即して,次の(A)-1,2の研究を行った. (A)-1: これまで行ってきた2バンドk.p理論をNバンド系へ拡張し,マルチバンドk.p理論を構築した.Lowdin partitioningを用いて注目するバンドに対する有効ハミルトニアンを導出,そこから有効質量テンソル,g因子の一般公式を導出した. (A)-2: マルチバンドk.p理論をBi系(Bi, BiSb, 圧力下Bi)およびPbTe系(PbTe, SnTe, Pb_{1-x}Sn_{x}Te)に適用した.実験とよく一致する強束縛近似模型から出発し,k.p変数を算出,これを上述の公式に代入し,具体的な計算を行った.Bi系に対しては,実験と高い精度で一致する結果を得た.PbTe系に対しては,群論的対称性の考察と合わせ,より簡明な公式の導出に成功した.バンド反転に伴うトポロジカル転移をバルク測定のみで検出できる方法,ディラック電子性を定量的に評価できる手法を新たに考案した. また,当初計画を前倒しして,次の(B)-1,2,3の研究も進めた. (B)-1: 2バンドk.p模型の表面状態について計算を行い,2バンドのみでは表面状態が現れないことを確認した.(B)-2: 表面状態を得るために,さらにマルチバンドk.p模型を用いて表面状態を計算し,解析的に表面状態の解を得ることに成功した.表面状態の出現条件と,系のトポロジーとの関係性を明らかにできた. (B)-3: 具体的な物質の表面状態を計算するために,系の異方性および電子・正孔対称性の破れた場合の計算を行い,それぞれについて解析解を得ることに成功した.
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