研究課題/領域番号 |
16K05440
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
大村 彩子 新潟大学, 研究推進機構, 助教 (60425569)
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研究分担者 |
山田 裕 新潟大学, 自然科学系, 教授 (10242835) [辞退]
石川 文洋 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (50377181)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 圧力誘起相転移 / Bi系層状合金 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、Bi系層状ラシュバ物質(BiTeX, X=Cl, Br, I)においてトポロジカル絶縁体領域を含む広い圧力領域で超伝導を探索し、さらに転移に寄与する結晶構造を解明することである。本物質群におけるトポロジカル絶縁体状態については、Br, I組成では数GPa以上で、Cl組成では常圧で発現することが報告されている。本研究では高圧力下の物性測定や放射光X線回折、および分光実験を研究手段として目的達成を目指している。初年度、Cl組成については改良型ブリッジマンアンビルセルを用いて13 GPaまでの圧力範囲で低温高圧力下電気抵抗測定を実施し、さらに再現性を確認するため複数の試料片について測定した。その結果、いずれの測定でも圧力誘起超伝導は7 GPa付近から観測され、この点については再現することが判った。しかし、超伝導転移温度値をはじめ、転移過程での抵抗率の温度依存性には再現性は見られなかった。この原因について、現在のところ測定試料のキャリア密度に依存する可能性が高いと推測している。また、Cl組成については室温高圧下でラマン分光実験を行い、4 GPa付近で構造相転移を示す明確なスペクトル変化が観測された。また、10 GPa以上でピークの位置および強度に変化が観られ、構造変化の前駆現象の可能性を示唆する結果が得られた。一方、I組成の試料については、室温下、X線回折により28 GPa付近まで結晶構造の圧力変化を観測した。その結果、2度の構造相転移が存在すること、また結晶構造は可逆的に戻ることが判明した。現在、高圧相の結晶構造モデルの解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に予定していたCl組成の粉末X線回折は、粉末化に伴う試料の変質により加圧実験を断念したが、単結晶試料を用いた室温高圧下ラマン分光を測定することにより、構造相転移の発生圧力領域に関する示唆を得ることができた。また、低温高圧下の電気抵抗測定から、11 GPa以上の圧力領域で電気抵抗率の温度依存性に異常がみられており、この結果から今後の構造探索の領域を絞ることができる。一方で、I組成の試料については計画通り進めることができ、室温下での圧力誘起構造相転移を見出した。以上のことから、おおむね順調に進んでいると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は低温高圧下粉末X線回折を計画しているが、実施のために必要な部品の設計・製作が遅れており、初年度内には実験準備の完了には至らなかった。そこで、次年度はまず第一にこの整備を進める計画である。構造研究については、初年度に測定したI組成データの解析により高圧結晶相の構造解析を完了すること、またBr組成についても同様に測定および構造解析を遂行する予定である。Cl組成については初年度のラマン分光の再現性も含め、単結晶試料を用いた低温高圧下のラマン分光を優先して行いたいと計画している。一方、物性測定については、ダイヤモンドアンビルセルを用いて、より高圧領域まで本物質群の超伝導を主とする物性探索を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、次年度の低温高圧下放射光X線回折の実施に向けて、初年度に必要不可欠な低温X線回折用のCu-Be製高圧セル関連を準備する計画であった。このうち、セルの加圧に必要な部品である「ガス配管付メンブレン(価格30万円・税別)」が既成品の仕様ではなく、利用装置環境に適した設計が必要であることが判明した。そのため、本部品の設計及び加工業者との遣り取りに時間を費やした結果、昨年度中には発注ができなかった。次年度使用額が発生した理由は、主に本部品の未発注によるものである。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額の発生は上記「理由」に記載した通りであり、現在も本部品「メンブレン」の発注・製作も向けて進行中である。本経費の使用が次年度にはなったが、使用目的は変わっておらず、本部品の購入に利用する予定である。
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