研究課題
最終年度である令和元年度の研究実績を以下に示す。研究期間延長の理由となった,昨年度後半に発生した致命的なダメージを負ったアーク溶解炉の修理を今年度夏に完成させ,研究遂行のために必要なプラセオジムPr,ネオジムNd,サマリウムSmを含む希土類化合物RTr2Al20(R:希土類元素,Tr:遷移金属元素,Al:アルミニウム)の多結晶作製,およびそれらを母材としたAl自己フラックス法を用い単結晶試料の育成を継続的に行った。特に今年度に育成を始めたNdV2(Ge0.1Al0.9)20単結晶,およびNdNb2Al20多結晶試料の作製により,研究の幅が拡がった。Ndの1-2-20系化合物では非フェルミ液体異常の起源となる,2チャンネル近藤効果を示し得る物質が得られる可能性が理論的に示され,その異常物性の発現を探索すべく,計画初年度に導入,構築したADR(磁気断熱消磁冷凍器)を用いた極低温比熱・熱電能測定系により物性測定を行った。その結果,NdV2(Ge0.1Al0.9)20では,非置換系NdV2Al20で見られていた1.7Kの磁気相転移を,GeとAlの置換によって1.3Kまで低下させることができた。2チャンネル近藤効果の観測には競合する相転移を抑えることが必須であり,この点で,相転移を抑え込む方向に物性をコントロールできることが可能となることがわかり,今後の研究展開に期待が持たれる。また,NdNb2Al20はこれまで試料作製の報告がなく,単結晶試料の育成には大きな困難が伴っている可能性がある。そこで先ず,我々が独自に確立させた富山メソッドと名付けた特殊な多結晶作製法を用いて,不純物のない純良多結晶を得ることに成功した。この試料に対して物性測定を行い,相転移温度はNd 1-2-20系でも特に低い0.6Kであることを見出した。再現性を確認するために多くの試料を作製中である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件)
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