研究課題/領域番号 |
16K05446
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
北尾 真司 京都大学, 原子炉実験所, 准教授 (00314295)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 鉄系超伝導 / メスバウアー効果 / 小角散乱 / 核共鳴散乱 |
研究実績の概要 |
本研究は、磁気秩序と超伝導の共存相が存在するBa1-xKxFe2As2などの鉄系超伝導体を対象に、核共鳴小角散乱と磁場下メスバウアー分光を用いて、両分光法をもとに磁性と超伝導の共存関係の詳細な描像を明らかにすることを目指すものである。本年度においては、対象となる単結晶試料の作成の確立、およびメスバウアー分光を用いた研究を主として行う計画として遂行している。本研究において作成する試料は、Fe57でエンリッチしたBa1-xKxFe2As2などの単結晶であるが、エンリッチ試料は少量しか用いることができないため、通常の試料の作成手法をそのまま適用することができない。作成手法を確立するため、フラックスの種類や、試料を封入する方法などを変えていくつもの作成手法を試み試行錯誤を行った。本年度の試行により、KAsフラックスを用いて、SUS管で封入する方法で、ある程度の大きさと質の単結晶を作成する見込みをつけることができた。今後の測定をさらに効率よく行うために、より大きなサイズの、より質のよい単結晶を作成するための試行を続ける予定である。作成した試料は磁化率測定で超伝導転移温度や超伝導体積の評価を行い、メスバウアー効果の測定により、磁性や電子状態の評価を行った。メスバウアー効果の温度変化の詳細な測定を行った結果、超伝導と何らかの関係があると予想されているネマティック秩序相と関連が考えられる結果が得られつつあることから、本研究から派生した成果として研究を進展させる予定である。また、本研究手段の一つである核共鳴小角散乱についても準備を進展中であり、実験機材の準備や解析手法の開発の準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画における単結晶の作成手法の確立については、なるべく少量でなるべく大きな単結晶を作成するという難しい点があるが、ある程度の作成の見込みをつけることができた。さらに試行を重ねて、よりよい条件で作成できるよう試行を継続する予定である。本研究を進めるうち、当初の本研究課題の目的とした超伝導と磁気秩序の共存に加えて、ネマティック秩序相についての情報も得られる可能性があることがわかった。ネマティック秩序相も、超伝導と何らかの関連があると考えられていることから、磁気秩序相に加えて、ネマティック秩序相を含めた超伝導メカニズムの解明に向けた研究を拡大することで、より深く超伝導の真相の追究を目指すことができると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的である磁気秩序と超伝導の共存相についての研究を進展させるため、Ba1-xKxFe2As2の単結晶試料の作成手法を確実なものとする予定である。また磁場下メスバウアー分光を用いた研究を各試料について行い、磁気秩序についてのみならず、ネマティック秩序相についての情報も取得し、超伝導との関連性について考察を行う。また本研究で手法の確立を目指す核共鳴小角散乱については、検出器および機材の準備を進展させて、実験手法の確立を推進し、さらに解析手法の確立をすることで、核共鳴小角散乱による研究手法を実現可能なものとすることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究で用いる手段の一つである核共鳴小角散乱の手法の確立のため、検出器などの実験機材の購入を予定していたが、一部の機材の納期の関係で今年度に購入できないことがわかり、次年度に購入することとした。また予定していた放射光施設での実験がマシンタイムの関係で、実施できなかったため、次年度に繰り越して行うこととなった。そのため、本年度の予定額の一部を次年度に繰り越して使用することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度に予定していた、核共鳴小角散乱において用いる機材の調達は、次年度に繰り越して実施する予定である。次年度に購入する機材としては、検出器の素子や回路類などがあり、これらを用いて、検出器測定系を構築する予定である。またノイズを軽減するためのビームストッパーの作成や、真空配管などの購入を予定している。また放射光施設での実験を、次年度以降に実施して本研究の目的を遂行する予定である。
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