研究課題/領域番号 |
16K05447
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山下 智史 大阪大学, 理学研究科, 助教 (40587466)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2020-03-31
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キーワード | 電荷秩序 / 分子性導体 / 強相関 / 熱容量測定 |
研究実績の概要 |
典型的な一次の相転移挙動を示す電荷秩序物質θ-(BEDT-TTF)2RbZn(SCN)4(RbZn塩)の電荷秩序挙動を追跡し、本系において急冷を必要としない電荷ガラス状態の実現手法を開発した。RbZn塩においては、電荷秩序転移温度である185K付近を10K/min以上の速度で急冷すると電荷秩序形成が阻害され、一定以上の電圧印加により電流値が急増する非線形伝導挙動を示す電荷ガラス状態の実現が報告されている。本系を含む4つの報告例では、電荷ガラス実現には臨界冷却速度と呼ばれる速度よりもはやい冷却速度での急冷が必要となる。一部の物質では150 K/min以上の急冷が必要な場合がある。前年度までの研究においてX[M(dmit)2]2における電荷秩序転移は、本質的に高次相転移の性質を有していることがわかった。電荷秩序転移が本質的に一次相転移の性質を持たないことは、隣接相としてギャップレスな量子スピン液体が実現していることと深く関係している可能性がある。一次転移性を検証する意味合いで、X[M(dmit)2]2における電荷ガラスの実現を検証することは有用であるが、臨界冷却速度がきわめて速く現実的に達成できない可能性がある。このため、本研究では非線形伝導状態と電荷ガラス状態の可逆性を利用して、急冷を必要としない電荷ガラス状態の実現方法の開発を目指した。RbZn塩に対して、交流電圧を印加しながら徐冷し、インピーダンスおよび熱容量を測定し、急冷によって得られた電荷ガラス状態と比較を行い、臨界冷却速度を大幅に下回る0.1 K/minの冷却速度でも電荷ガラス状態がバルクに実現することを明らかにした。この手法を用いればX[M(dmit)2]2系における本質的な電荷ガラス状態実現の可否を解明できる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目標は種々の測定手法を組み合わせることによりX[M(dmit)2]2系の電荷秩序転移の詳細を解明し、量子スピン液体に隣接した電荷秩序相特有の挙動を明らかにすることにある。前年度までに本系の電荷秩序が本質的に高次相転移の性質を有していることを見出した。この特徴が本系特有のものであるかどうかを考察する上で、典型的な電荷秩序との比較は重要である。本年度にRbZn塩に対して行った電圧印加による徐冷過程での電荷ガラスを実現させる手法は、X[M(dmit)2]2系における電荷ガラスの実現を検証可能な新たな手法である。この手法を用いれば急冷が難しいインピーダンス測定システムや熱容量測定システムを用いても実質的な急冷効果を検証でき、多角的な視野から急冷効果を調べることができる。本手法をX[M(dmit)2]2系に対して適用することで、本質的に急冷効果が存在するかどうかを調べることが可能となる。しかしながらインピーダンス測定装置の大規模な故障が生じたため、データ採取が滞ったため、最終的な結論が得られてない状況であり研究進捗はやや遅れている状況である。すでに修理やその他必要な測定環境の整備等は完了しており、予定しているデータを取得し、これまでの得られた結果とともに議論を行うことで、典型的な電荷秩序状態と本系の電荷秩序の違いを明らかにしていくことは十分に可能である。
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今後の研究の推進方策 |
誘電測定装置の故障により研究進捗が遅れてはいるが、これまでに得られた結果は、研究当初の想定から大きく外れておらず、研究自体は順調に進行している。また、本研究で開発した急冷を必要としない電荷ガラス状態の検証方法は、冷凍機など冷媒を使用しない装置にも転用できる記述である。すでに誘電測定装置の修理は完了しており、ファンクションジェネレータ,データーロガーなどの測定環境が整っている。このため、RbZn塩およびX[M(dmit)2]2系における電圧印加による電荷秩序状態の影響をインピーダンス測定および熱容量測定の観点から調べていく。また、電場印加をしながらの冷却効果について熱容量測定からも評価し、典型的な電荷秩序状態と本系の電荷秩序の違いを議論し、特有の性質についてまとめていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
地震により使用していた共用の誘電測定装置が故障したため、一部の実験が完了できなかった。この実験に関わる消耗品および本測定により得られるデータの発表に使用する予定の予算を次年度に繰り越して使用する必要が生じたため。
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備考 |
一定期間経過後、一般閲覧可能
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