空間反転対称や時間反転対称など対称性が破れた系における超伝導の特異的な特徴を観測することを、本研究の目的とし研究を遂行した。空間反転対称性の破れた超伝導体CePt3Siや様々な対称性が破れた超伝導体における点接合分光実験、強磁性超伝導体UGe2における磁区構造と超伝導状態の相関関係を明らかにするための磁化測定、空間反転対称性の破れた結晶構造を持つ新しい化合物の探索を行った。 我々が発見したCe3TiBi5において、圧力誘起の超伝導現象が観測された。試料育成にBiをフラックスとして用いているためBiの圧力誘起超伝導が疑われるが、Ce3TiBi5の本質の超伝導であれば局所的な空間反転対称が破れた系における超伝導となるため慎重に評価した。電気抵抗測定による評価では、超伝導が現れる低圧側の圧力依存性や転移温度においては若干の差はあるものの類似性が見られた。しかしながら、臨界磁場や高圧の圧力依存性には明らかに差が観測された。圧力下交流比熱測定による評価では、圧力下で比熱の異常が観測されなかった。重い電子系であるこの系では軽いフェルミ面のみが超伝導になっている可能性も考えられるため、マクロ測定による評価では不十分で、NMRなどによるミクロ測定が今後必要となる。 異方的超伝導であることが確実視されており、FFLO状態が実現すると期待されているCeCoIn5において、超伝導ギャップの観測に成功した。点接合分光スペクトルでは超伝導の電流電圧特性と混同されることがあるが、我々が観測したのは微分抵抗スペクトルでゼロバイアスにピークができる構造であり、その可能性を完全に否定でき、スペクトルはギャップ構造を反映している。超伝導ギャップの形状はラインノードを示唆するゼロバイアスの鋭角なピークが観測された。しかしながら、今回はアンドレーエフ共鳴など位相の符号反転に関する情報は得られなかった。
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