研究課題
超伝導研究において、新たな対称性を持つ超伝導電子対を発見することには高い学術的意義がある。私たちは、超伝導電子対が自発磁化を持ち時間反転対称性を破るカイラル超伝導状態に着目した。ハニカム構造、ファンホーブ特異性、乱れによる超伝導抑制の特徴を有する化合物は、カイラルd波対称性の電子対を持つ可能性が高いと考えられる。本研究では、それらの特徴を有する物質を合成し、微弱な局所磁場を検出することができるミュオンスピン回転/緩和の実験を行い、超伝導電子対の自発磁化を捉えることを目的とする。平成28年度は、結晶育成と試料評価を行い、最初のミュオンスピン回転/緩和の実験を行った。溶融凝固法あるいはフラックス法により、上記の特徴を有する超伝導体の単結晶試料を育成した。粉末および単結晶X線構造解析により、結晶構造を決定した。SEM-EDXを用い、化学組成を求めた。磁化と電気抵抗の温度依存性を測定し、超伝導転移温度を決定した。電気抵抗については、断熱消磁法により0.1 Kの低温まで測定を行った。このようにして評価した試料を用い、J-PARC(東海村)とPSI(スイス)において、ミュオンスピン回転/緩和の実験を行った。磁場侵入長の温度依存性から、測定した試料がバルク超伝導体であることが分かった。超伝導転移温度以下における超伝導電子対の自発磁化発生の有無については、今後、ミュオンスピン回転/緩和の実験データを増やし、詳細に解析して明らかにする予定である。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度の研究計画通り、ハニカム構造を持つ超伝導体の合成、試料の評価、ミュオンスピン回転/緩和実験を行うことができた。ほぼ当初の予定通りに進んでいるため、本研究について「おおむね順調に進展している」と判断した。
引き続き、ハニカム構造を持つ超伝導体の単結晶を育成し、ミュオンスピン回転/緩和実験を行う。ミュオンスピン回転/緩和実験については、平成28年度の結果を踏まえ、測定する試料と実験条件の最適化を行う。
試料の合成方法に進展があったため。外部の研究機関から旅費の支給を受けたため。
主に、実験と成果発表を行うための旅費に充当する。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 謝辞記載あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
Journal of the Physical Society of Japan
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10.7566/JPSJ.86.025002
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http://www.physics.okayama-u.ac.jp/nohara_homepage/sc_SrPtAs.html