研究課題
分子線エピタキシー法によりCeB6およびSmB6おエピタキシャル膜を得た.基板にはSi(100)面を用いた.基板に対する前処理として,表面に存在する自然酸化膜を除去する目的でフッ酸によるエッチングを行った.Bは高融点低蒸気圧であるが,わずかながら昇華性がある.本研究ではその点を利用して高温クヌードセンセル(Kセル)による加熱蒸着でBの蒸着を行った.この手法は通常選択される電子ビーム蒸着に対して蒸着レートのより高い安定性が得られるというメリットがある一方,蒸着レートが極めて低くなるデメリットがある.本研究では長時間の時間平均を取ることで低いレートでも正確な蒸着レートの読み取りを可能にした.これにより低いレートだが良くコントロールされた蒸着を実現した.Ce, Smに関してもKセルを用いて,低いレートでの安定した材料原子の供給を実現した.これによりエピタキシャル成長した膜を得た.結晶方位はCeB6の方が良くコントロールされており,基板の面直方向には[001]が成長し,面内ではSi[110]に対してCeB6[100]が配向した膜が得られた.SmB6に関してはCeB6と同様の配向性のドメインに加えて,面直方向にSmB6の[011]が成長し,面内方向ではSi[110]に対してSmB6[100]が配向したドメインとSi[-110]に対してSmB6[100]が配向したドメインの3つのドメインが混交して成長した.CeB6薄膜では,磁場下の電気抵抗率測定から薄膜においても四重極秩序が実現していることを明らかにした.SmB6についてはパルス強磁場を用いて磁気抵抗とホール抵抗の測定を行った.SmB6は負の磁気抵抗を示すが,強磁場下でも低温で一定値を示す特異な温度依存性はほとんど変化しないことを明らかにした.
3: やや遅れている
薄膜試料においてもバルクの振る舞いを良く再現しうること,極低温での物性測定が可能であることを示した.今後は超格子膜の成膜を行い,その物性測定を行う.
これまでの研究で確立した希土類硼化物薄膜の成膜技術を用い,希土類硼化物薄膜とバンド絶縁体の人工超格子を作製する.希土類硼化物層の厚みを徐々に薄くすることにより次元性を制御し,電子状態の変化を明らかにする.
(理由)高温Kセル用のヒーターおよびるつぼについて高額な消耗品として消耗を見込んでいたが,本年度中の消耗が見込みより少なかった.また寒剤についての消耗を見込んでいたが,想定よりも消費量が少なかった.(使用計画)超格子膜の作成と極低温の測定を行う.ヒーター,るつぼなどの消耗品購入と寒剤費用に充てる.
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (23件) (うち国際学会 15件、 招待講演 1件)
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