研究課題
分子線エピタキシー法によりエピタキシャル成長したSmB6/SrB6人工超格子を得た.基板にはSi(100)面を用いた.基板に対する前処理として,表面に存在する自然酸化膜を除去する目的でフッ酸によるエッチングを行った.Bは高融点低蒸気圧であるが,わずかながら昇華性がある.本研究ではその点を利用して高温クヌードセンセル(Kセル)による加熱蒸着でBの蒸着を行った.この手法は通常選択される電子ビーム蒸着に対して蒸着レートのより高い安定性が得られるというメリットがある一方,蒸着レートが極めて低くなるデメリットがある.本研究では長時間の時間平均を取ることで低いレートでも正確な蒸着レートの読み取りを可能にした.SmB6薄膜の電気抵抗率の温度依存性はバルクの特徴を良く再現し,降温と共に増大するが,3 K以下の極低温で一定値を取る.一方,SmB6を5層,SrB6を7層積層させた人工超格子SmB6(5)/SrB6(7)と, SmB6(4)/SrB6(7)の電気抵抗率の温度依存性は,極低温で一定値を取る傾向を見せるが,SmB6(3)/SrB6(7)では降温と共に上昇を続ける振る舞いを見せた.これはSmB6は近藤トポロジカル絶縁体であり,SmB6層が十分に薄い極限では,表面伝導層間で混成が起こりディラックギャップが生じていることを強く示唆する.また,膜に対して平行と垂直方向に磁場をかけたときの横磁気抵抗は異方的であり,面内方では磁気抵抗が極めて小さい.この結果もSmB6(3)/SrB6(7)でディラックギャップが生じていることを支持する.
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