研究課題
量子スピン液体状態にあるα-RuCl3に円偏光を照射することで磁化が面直に発生する逆ファラデー効果が実験で観測されたので、その発現機構を理論的に解析した。当該物質がハニカム格子上の各サイトに3種のd軌道(dyz, dxz, dxy)をもち、隣接するサイト間では同種軌道間、異種軌道間ともに正孔が移動し、オンサイトのスピン軌道相互作用とクーロン相互作用をもつことを反映した3軌道ハバード模型を扱った。数値的には厳密対角化に基づく時間依存シュレディンガー方程式を使って光誘起ダイナミクスを計算し、解析的にはフロケ理論の高周波数展開を用いて有効磁場を求めた。印加する光電場の振動数をモットギャップよりも小さく設定すると、基本的には各サイトに正孔が1個ずつの状態のままで、ある正孔の有効角運動量が1/2から3/2へ遷移することに対応するスピン軌道励起子を生成する。円偏光照射の場合は、面直の磁化が発生し、その向きが円偏光のヘリシティに依存する。これはフロケ理論の高周波数展開のうち、異種軌道間で正孔が移動することによって有限の値をもつ運動項の交換関係に起因し、スピン軌道相互作用とは無関係に発生する有効磁場による。直感的には円偏光の光電場の下での正孔のハニカム格子上の運動が、円偏光のヘリシティに依存して時間とともに向きを変え、正孔の存在するd軌道の種類の時間順序がヘリシティに依存して変わることによる。有効角運動量が3/2の正孔が隣接サイトに存在する、いわゆるダブルのスピン軌道励起子を生成すると、対応する2個の正孔は相関をもって運動するため、正孔の存在するd軌道の種類の時間順序が反転し、有効磁場と面直磁化が反転することもわかった。さらに、高周波数展開のうちスピン軌道相互作用と運動項の二重交換に起因する面内の有効磁場も発生するが、単位胞内の2つのサイトでこの面内の有効磁場は反平行のまま回転する。
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Journal of the Physical Society of Japan
巻: 90 ページ: 044713
10.7566/JPSJ.90.044713
Physical Review B
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http://www.phys.chuo-u.ac.jp/labs/yonemitsu/
https://researchers.chuo-u.ac.jp/Profiles/3/0000277/profile.html