研究課題/領域番号 |
16K05460
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研究機関 | 九州産業大学 |
研究代表者 |
西嵜 照和 九州産業大学, 理工学部, 准教授 (90261510)
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研究分担者 |
加藤 勝 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90204495)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 超伝導 / 低温物性 / 物性実験 / ナノ構造 / 金属物性 |
研究実績の概要 |
本研究では,非周期ナノ構造体であるバルクナノメタルの特異な超伝導物性とその機構を解明することを目的とし,巨視的物性(磁化,電気抵抗率)の測定を行った.また,平成29年度に予定している走査プローブ顕微鏡によるマルチスケール物性測定のための予備実験を行った.対象とするバルクナノメタルはナノスケールの微細結晶粒を持つ均一なバルク状の金属材料であり,超伝導体に適用した場合には超伝導物性を制御できるだけでなく,従来の金属系超伝導体にはない特異な電気的・磁気的性質を発現することが期待されている.本研究では,微細結晶粒からなるナノ構造体の超伝導秩序の形成と渦糸状態を解明し,ナノスケールで発現する特異な超伝導物性を理解することを最終目標としており,平成28年度は以下の成果が得られた. (1) 高圧ねじり(HPT)加工法で作製されたバルクナノ超伝導体を作製し,磁化,電気抵抗の測定を行った. (2) HPT-VではHPT-Nbと異なり,HPT加工によって臨界温度が低下することが分かっているが,その原因を明らかにするためHPT-Vの電気抵抗測定から残留抵抗率を求めて系のクリーンさを評価した.その結果,HPT-Vは平均自由行程がBCSコヒーレンス長より短くなりdirty超伝導領域にあることが分かった.この結果は上部臨界磁場と残留抵抗率の関係からも支持される結果となった. (3) 第1種超伝導体であるTaに注目しHPT加工による超伝導の磁気的性質の変化を調べた. (4) HPT-NbとHPT-Vの臨界温度の加工による変化の違いを明らかにするために,ナノ構造超伝導体における不純物効果を理論的に調べた. (5) バルクナノ超伝導体の渦糸構造を測定するために,SQUID顕微鏡を用いた予備実験を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
【研究実績の概要】欄の項目(1)~(4)については,ほぼ予定通り順調に進捗しているが,項目(5)については予備実験の段階ですでに当初の計画以上の研究成果が得られ始めたので,「当初の計画以上に進展している」とした.
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今後の研究の推進方策 |
基本的な研究計画に変更はないが,計画以上に進展している実験手法に関しては,様々なバルクナノ超伝導体に適用しその系統性についても議論する.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に購入した低温物性測定装置制御システム(50万円以下)が当初の予定より低価格で導入できたことと,実験が順調に進んだため消耗品の使用量を抑えることができたことなどが理由である.
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は新しいバルクナノ超伝導体の実験を予定しているため,その実験消耗品として使用する予定である.また,平成28年度に得られた研究成果を積極的に発信できるよう学会発表件数を増やす予定である.
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