研究実績の概要 |
本研究では,非周期ナノ構造を持つ超伝導体について,特異な超伝導物性とその機構を解明することを目的として,研究代表者による実験的研究と研究分担者による理論的研究を両者間で連携を取りながら実施した.その結果,平成30年度は以下の研究成果が得られた. (1) 前年度に引き続き,高圧ねじり(HPT)加工を用いて研究対象となるナノ構造超伝導体を作製した.平成30年度は,第Ⅰ種超伝導体であるTaと第Ⅱ種超伝導体であるNbやVなどの金属元素超伝導体に加え,合金系超伝導体NbTiについても研究を行った. (2) NbTiについては,Nb - 47wt.%Tiの粉末を原料としてHPT加工 (N = 1, 2, 5, 10, 20, 50, 100) でNbTi合金を作製し,SQUID磁束計を用いて磁化特性を測定した.その結果,合金化の初期課程 (N < 5) ではNbとNbTiに対応する2種類の上部臨界磁場が観測された.HPT加工とともにNbTiの単相の超伝導転移へと移り変わり上部臨界磁場Hc2(T)が増加することが分かった. (3) Nb, V, TaにおけるHPT加工の実験では,臨界温度Tcに対するHPT加工の効果が物質ごとに異なることが本研究課題の成果として得られいるが,その機構を明らかにするために磁化と電気抵抗の測定結果から乱れの度合い度見積もった.その結果,HPT加工した金属超伝導遺体ではナノ構造化によるTcの上昇と乱れの導入によるTcの低下の競合が起こり複雑な振る舞いになることを示した. (4) 乱れがある場合の微小超伝導体の臨界温度Tcを理論的に調べ,乱れのポテンシャルが小さな場合にはポテンシャルととともにTcが減少する場合と増加する場合があること,また,その原因が準粒子のエネルギーの準位の変化と巨視的波動関数の局在によることを示した.
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