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2018 年度 実施状況報告書

電荷または軌道自由度による擬近藤効果と遍歴描像への接続

研究課題

研究課題/領域番号 16K05464
研究機関大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構

研究代表者

倉本 義夫  大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 特任教授 (70111250)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2020-03-31
キーワード軌道近藤効果 / 四極子秩序 / 遍歴多極子 / バンド構造 / 軌道縮退 / スピン軌道相互作用 / LiV2O4 / 鉄系超伝導体
研究実績の概要

*現実系の軌道近藤効果
本年度の研究では,現実の物質のバンド構造を考慮して,軌道近藤効果が実現するための必要条件を調べた。具体的には,PrMg3とPrPb3を比較して,f電子とリガンドの混成を定量的に見積もった。バンド構造を見ると,PrMg3ではフェルミ面近くに軌道縮退し,かつ奇の対称性を持つ伝導バンドは存在しない。一方PrPb3では軌道縮退のある奇状態につながる伝導バンドがフェル準位をまたいでいる。結果の一部は物理学会で報告した。
*LiV2O4のエネルギー尺度生成機構
LiV2O4では低温で重い電子が実現する。この実現機構は長らく通常の近藤効果と思われてきたが,観測される複数のエネルギー尺度はこの解釈では説明できない。LiV2O4結晶に特有の構造のためにVスピンの反強磁性的交換相互作用が秩序をもたらすことが困難になる。本年度は,ミューオンを用いる実験グループとの新しい研究協力により,LiV2O4のスピン動力学では,サイト間相互作用におけるフラストレーションが,複数のエネルギー尺度をもたらすという新しい観点を提案した。この成果の一部は物理学会で報告し,また出版論文として公表した。
*鉄系超伝導体の磁気励起
鉄系超伝導体の一つであるLaFeAsO_{1-x}H_{x}は水素ドーピングにともなって超伝導と磁性が劇的に変化する。重水素Dを置換した試料に対して,中性子散乱を用いたスピン動力学研究がなされている。x=0.5の場合には,磁気励起のギャップがほとんど消失するという結果が得られた。この原因を実験家と協力して考察し,ドーピングにともなう電子構造の変化が,Feのd_{xy}軌道のみが磁性に関与する事情をもたらすことに注目した。この軌道によるxy平面内で等方的な磁性が磁気ギャップ消失の原因であることを論じた。この成果の一部は複数の研究会で報告し,また出版論文として公表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

エネルギーバンド構造を計算する専門家との共同で,現実的な電子構造に基づいた電荷近藤効果に関する初めての理論構築を継続している。本年度の研究結果は,間もなく論文として公表する予定である。
新たに実験家を含めた新しい研究協力を開始した。具体的には,ミューオンを用いてLiV2O4を研究しているグループと実験結果解析を行い,共著論文を公表した。この系では,Vスピンの反強磁性的交換相互作用が特有の結晶構造により阻害され,重い電子が実現する。重い電子の実現機構は,長らく通常の近藤効果と思われてきたが,我々の研究ではサイト間相互作用におけるフラストレーションが,複数のエネルギー尺度をもたらすという新しい観点を提案した。
さらに,中性子散乱を用いて鉄系超伝導体の一つであるLaFeAsO_{0.5}D_{0.5}を研究しているグループと共同研究を行い,ドーピングにともなう電子構造の変化が,スピン動力学の異方性を劇的に減少させていることを論じた。

今後の研究の推進方策

バンド計算の専門家との協力をさらに推進する。具体的にはPrTi2Al20など,単位格子に多くの原子を含む物質にターゲットを広げ,実験的に観測されている興味ある圧力依存性と軌道近藤効果の関連についても検討する。また,電荷近藤効果を含む拡張については,Smを含むスクッテルダイト系やSmTa2Al20系の理解も視野にいれて研究する。

次年度使用額が生じた理由

パソコンとして,当初の予算より定額のものを購入した。また,外国出張については,種々の状況から実施しなかった。
令和元年度に,パソコン周辺機器と拡張部品を購入する予定である。また,複数の国内外出張を行い当科研費から旅費を充当する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Metallic spin-liquid-like behavior of LiV_2O_42019

    • 著者名/発表者名
      H. Okabe, M. Hiraishi, A. Koda, K. M. Kojima, S. Takeshita, I. Yamauchi, Y. Matsushita, Y. Kuramoto, and R. Kadono
    • 雑誌名

      Phys. Rev. B

      巻: 99 ページ: 0411131-0411135

    • DOI

      https://doi.org/10.1103/PhysRevB.99.041113

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Gapless magnetic excitation in a heavily electron-doped antiferromagnetic phase of LaFeAsO_{0.5}D_{0.5}2018

    • 著者名/発表者名
      H. Tamatsukuri, H. Hiraka, K. Ikeuchi, S. Iimura, Y. Muraba, M. Nakamura, H. Sagayama, J. Yamaura, Y. Murakami, Y. Kuramoto, and H. Hosono
    • 雑誌名

      Phys. Rev. B

      巻: 98 ページ: 1744151-1744156

    • DOI

      https://doi.org/10.1103/PhysRevB.98.174415

    • 査読あり
  • [学会発表] 金属スピン液体候補物質としてのLiV2O42018

    • 著者名/発表者名
      岡部博孝, 平石雅俊, 幸田章宏, 小嶋健児, 竹下聡史, 山内一宏, 松下能孝, 倉本義夫, 門野良典
    • 学会等名
      日本物理学会2018年秋季大会
  • [学会発表] 電子状態と軌道近藤効果の発現機構の理論的研究2018

    • 著者名/発表者名
      舩島洋紀, 倉本義夫, 播磨尚朝
    • 学会等名
      日本物理学会2018年秋季大会

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公開日: 2019-12-27  

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