今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、前年度に調べた複雑ネットワークのフラクタル性と長距離次数相関の関係をより詳細に解析する。そのため、まずネットワークにおける長距離次数相関の一般論を展開する。これまで精力的に研究されてきた隣接次数相関は、エッジ両端のノードの次数がkとk'である同時確率P(k,k')によって完全に記述される。この考えを拡張すると、長距離次数相関は任意抽出された2つのノードの次数がkとk'であり、両ノードの最短経路長がlである同時確率P(k,k',l)によって表すことができる。次数kのノードに隣接するノードの次数がk'である条件付き確率P(k'|k)によっても隣接次数相関が表されるように、長距離次数相関の一般的性質は条件付き確率によっても記述可能であると考えられる。しかしながら、隣接次数相関とは異なり、長距離次数相関を表す条件付き確率は複数存在する。今年度の研究では、独立な条件付き確率を全て抽出し、同時確率P(k,k',l)との関係を明らかにする。その上で、長距離次数相関が無いネットワークにおいてこれらの確率分布関数がどのような関数形を取るのかを解析的に調べる。無限に大きなネットワークの場合、P(k,k',l)は有限のlに対して常にゼロとなるため意味をなさない。したがって、この解析を行う際には有限ネットワークを対象としなければならないことに注意する。長距離次数相関の一般論を構築した後、これらの確率分布を用いることで、平均l次隣接次数や長距離assortativityのような次数相関の特徴を理解するのに有用な指標を提案する。特に、フラクタル・ネットワークに見られるハブ・ノード間の長距離に渡る反発傾向の強さを表す指標を導入する。この指標を多くの現実ネットワークや数理モデルによるネットワークに対して計算することで、複雑ネットワークのフラクタル性とハブ間の長距離反発の関係を明らかにする。
|