研究実績の概要 |
最終年度である平成30年度は、前年度までに構築したモデルとは異なる種類の自己組織化モデルを構築した。このモデルはコロニー形成機構をネットワーク・ダイナミクスに基づき説明するものであり、まずランダムな値の適応度が割当てられた多数のノードを2次元空間中にランダムに配置する。2つのノードの適応度の積を2ノード間のユークリッド距離のm(>0)乗で除した量がある一定値θを上回った際に、これら2つのノード間にエッジを配するものとする。こうして出来たネットワークの中の最小次数ノードとそれに繋がった全ての最近接ノードを削除し、削除したノード数と同じ数のノード(適応度はランダム)をランダムな場所に配置し、先の規則でエッジを張る。この操作を多数回繰り返すことにより、空間的に狭い領域にノードが集中した定常的なコロニーが形成されることを明らかにした。また、2次元空間が正方形の固定境界にした場合、ノードは正方形の四隅に集中することを示した。このことから、海岸線のように2次元空間の境界がフラクタル性を有する場合、ノードの空間分布もフラクタル性を示すものと考え、境界のフラクタル性とノード分布のフラクタル性の関係について調べた。また、平成30年度での研究では、ネットワークのフラクタル性と長距離次数相関の関係を明らかにすることを目的に、長距離次数相関を記述するための一般論を展開した。具体的には、任意抽出された2つのノードの次数がkとk'であり、両ノードの最短経路長がlである同時確率P(k,k',l)を導入し、与えられたネットワークGに対するP(k,k',l)とそのネットワークと同じ次数分布を有するランダム・ネットワークのP(k,k',l)を比較することで、ネットワークGにおける長距離次数相関の有無を示すことができることを示した。
|