研究課題/領域番号 |
16K05468
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
堺 和光 東京理科大学, 理学部第二部物理学科, 准教授 (10397028)
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研究分担者 |
茂木 康平 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (30583033)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Schramm-Loewner発展 / 可解模型 / 共形場理論 / 量子可積分系 / 確率過程 / K理論 / 対称多項式 / スピン輸送特性 |
研究実績の概要 |
研究代表者および分担者によって見出された,あるクラスの可解格子模型および可積分確率過程とグラスマン多様体のK理論との新たな関係について研究を進展させた.前年度展開した,Izergin-Korepin模型の解析を6頂点模型の波動関数に対して拡張する手法を,より扱いが難しくなる境界条件下や楕円型の模型に対して適用することにより,対称関数の研究を行った.例えば,XXZ型6頂点模型の反射境界条件下における波動関数と対称関数の明示的対応を明らかにした.また,楕円多項式の概念を組み込むことにより,楕円Felderhof模型の波動関数と楕円Schur関数との明示的対応を明らかにした.この結果は,Schur関数のTokuyama公式の楕円版に相当する.更に,波動関数と対称関数の対応に基づき,対称関数の様々な代数等式を導出した.例えば,楕円Felderhof模型のスカラー積やドメイン壁分配関数より,楕円Schur関数のCauchy公式および双対Cauchy公式を導出した.
この他,spin-1/2 XXZ模型のスピン輸送特性に関し,6頂点模型のrow-to-row転送行列に成立する関数方程式(T-system, Y-system)を用いて,Drude weightの厳密解を導出した.この方法の利点は,string仮説を用いない点,有限サイズのDrude weightの振る舞いが解析できる点である.結論として,Drude weightは極めて強い有限サイズ効果を有することが明らかにされた.この研究によって,厳密対角化等の数値計算(および結果の外挿)による熱力学極限の厳密解との比較の相違は,非常に強い強い有限サイズ効果によるものであることが明らかにされた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ある種の可積分確率過程とその背景にある数理構造であるK理論に関連する基礎的研究に関して,これまで困難であった双対的な波動関数の理論に進展があり,その研究成果を更に発展させることが出来た.また,可解模型の背景にある対称性から得られる関数関係式を,量子スピン鎖のスピン輸送特性の解析という応用的研究に適用し,新たな知見が得られた.一方で,Schramm-Loewner発展の可積分変形に関しての研究は当初計画よりやや遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
分担研究者や共同研究者との頻繁な議論を通したより密接な連携を取ることにより,研究をより効率的に遂行する.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入を予定していたパソコン等を次年度に購入する予定にしたため.
次年度に旅費および物品等の購入に使用する.
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