本年度も昨年度に引き続き、まずは乾燥破壊現象の統計則に関連して、メゾスケールモデルの確率モデルの研究を行った。昨年度からの課題であったシステムサイズ依存性と臨界現象の関係を明らかにすべく集中して解析を行った。その結果、散逸パラメータを連続的に変化させていくと、臨界現象で見られる臨界指数が連続的に変化していく様子が一部解明されたが、散逸パラメーターのある極限値で予測されるボンドパーコレーションの普遍クラスとしての振る舞いは依然不明瞭なまま残されている。この状況を打開すべく、まだ予備的な段階ではあるが、成果を学会で発表し、多数の臨界現象の専門家と議論を行った。この結果、解析のヒントを得ることが出来たが現在まだ完了していない。また乾燥破壊現象に関連して共同研究を行っており、別のタイプの確率モデルやフェーズフィールド法に基づくモデルによる破壊現象における統計力学的性質の研究成果を学会発表した。 さらに破壊現象の非平衡物理として共通点がある河川のネットワークのパターンに関する研究を始めた。河川のネットワークは、陸地が降水によって削られ成長するネットワークであり、破壊現象のひび割れと類似性がある。そのようなネットワークに対してまずは統計的性質を調べるため、ある特殊な環境下で調べられていた分岐角度の分布に注目し、日本全土で研究を行った。その結果、日本全土でも地質など特別な条件によらずある普遍的な分布法則を示していることが明らかになった。この成果は論文として出版した。さらに、その普遍的な性質を理論的に解明するため数理モデルを構成し、シミュレーションを通じて研究している。その成果は一部学会にて報告した。また現在は降水条件依存性と普遍性の関係を明らかにすべく別の数理モデルを構成し研究を行っている。
|