研究課題/領域番号 |
16K05475
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
梶原 行夫 広島大学, 総合科学研究科, 助教 (20402654)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 液体液体相転移 / ゆらぎ / 非弾性X線散乱 / 超音波 |
研究実績の概要 |
液体-液体相転移臨界点の検証に向けて、第一段階である50MPa級低温高圧液体容器の開発が完了した。また実際の実験についても、理研への実験申請が採択され、次年度5月に大型放射光施設SPring-8のBL43LXUにおいて非弾性X線散乱測定を行う手はずとなっている。 第二段階である、より高圧の500MPa級容器については、要素技術の開発を行った。液体の保持に関しては、試作器を用いて早々に-100℃、500MPaの状態を達成することができた。ただ低温化した装置への結露を防止する手法が未だ確立しておらず、装置の発注には至っていない。 またこれらとは別に、液体-液体相転移とガラス転移液という二つの現象の関係を議論するため、それぞれの現象の典型液体を混合した、水-グリセロール混合系について超音波測定を行った。得られた緩和強度の組成依存性は、両物質の間でスムーズにつながっており、両現象はその起源に関わらず、「緩和現象」の枠組みで統一的に理解できる可能性があることがわかった。 液体-液体相転移臨界点は、すでに20年以上前にその存在が提唱されたものの、その実験的検証はこれまで達成されていない。「ゆらぎ」に着目したアプローチは我々のオリジナルであるが、その方法やコンセプトが業界に浸透しているとはいい難い。そこで一連の研究の方向性について、学会誌に解説記事を投稿し、普及に努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
50MPa級容器の開発およびそれを用いた実験については、当初計画では実際のX線測定(非弾性X線散乱、X線小角散乱)まで行う予定であったので、若干遅れている。 500MPa級容器の開発については、要素技術の開発が一部遅れており、(予算を計上してあった)装置の発注には至っていない。 水-グリセロール混合系の実験については当初計画にはなかったが、大きな目標の一つであるガラス転移と液体-液体相転移の関係について議論する上で、おもしろい結果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
50MPa級容器を用いた液体メタノールの非弾性X線散乱測定を行う。得られた結果から、より高圧域に存在すると予想されている液体-液体臨界点の存在可能性について、議論を行う。 500MPa級容器に関しては、結露防止策を早急に確立し、発注を行う。装置が納入され次第、(広島大学の装置で)X線小角散乱測定を行う。非弾性X線散乱についても早期に実験を遂行するが、SPring-8の実験申請の時期(半年に一度)との兼ね合いで、次年度にずれ込む可能性もある。いずれも対象試料については、液体メタノールを予定しているが、50MPa級で得られた結果によっては、別の系にする可能性もある。 水-グリセロール混合系についても、高圧下のX線散乱実験を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であった500MPa級高圧容器について、要素技術の開発が終了せずに発注するに至らなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
要素技術の開発を年度早々に終了させ、今年度中に高圧容器を購入する。
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