| 研究課題/領域番号 |
16K05479
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| 研究機関 | 琉球大学 |
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研究代表者 |
安田 千寿 琉球大学, 理学部, 准教授 (20398564)
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| 研究分担者 |
秋山 聡 和歌山工業高等専門学校, 総合教育科, 教授 (10256662)
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| 研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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| キーワード | ランダム量子スピン系 / スピンパイエルス / 格子の自由度 / フォノン / 反強磁性長距離秩序 / 量子モンテカルロ法 / 不純物 |
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| 研究実績の概要 |
低温で格子が交互に歪むために非磁性な状態が実現するスピンパイエルス物質に非磁性不純物をドープすると、反強磁性長距離秩序が発現する。本研究では、その発現メカニズムを理論的に明らかにし、磁性体における多くの不純物効果の実験結果を解釈する知見を得たい。
本年度は、格子の自由度と結合したスピン1/2反強磁性ハイゼンベルク模型に着目した。この模型における二次元サイト希釈系の従来の研究では、低温で、有効スピンと呼ばれる磁気モーメントが希釈サイト近傍に誘起するとされてきた。しかしながら、この模型で記述されるスピンパイエルス物質の実験結果では、有効スピンが不純物近くにはないことが確認されている。そこで、本研究では、有効スピンが希釈サイト近傍に誘起されない場合とはどのような状況であるかを検討し、その場合に反強磁性長距離秩序が発現するかを、量子モンテカルロ法を用いて調べた。
最初に、有効スピンが希釈サイトや希釈ボンドの近くに誘起する場合とそうでない場合の二通りの格子歪みパターンを仮定し、それぞれの基底状態エネルギーを比較した。その結果、弾性定数が大きいほど、鎖間相互作用が小さいほど、希釈濃度が大きいほど、有効スピンが希釈サイト等の近くには誘起されないことが分かった。
次に、一次元有限鎖における格子歪みパターンを自己無撞着に計算した結果、格子歪みは双曲線正接関数で表され、ソリトン型の磁気モーメントが有限鎖の端以外にも誘起されることを確認した。さらに、一次元鎖をスピン間相互作用で結合した二次元系において、希釈サイト間の格子歪みパターンとして一次元系の結果を用い、サイト希釈効果を調べた。その結果、反強磁性長距離秩序が発現することを確認した。この結果は、有効スピンが希釈サイト近傍ではない位置に誘起されても、反強磁性長距離秩序が発現することを示している。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画では、格子の自由度と結合した反強磁性ハイゼンベルク系において、一次元有限鎖のサイズ効果を調べ、それを用いて、二次元系におけるサイト希釈・ボンド希釈の効果を、量子モンテカルロ法を用いて調べることを計画した。一次元有限鎖の計算は完了し、二次元サイト希釈系の計算も順調に進んでいる。二次元ボンド希釈系の計算を今後実施予定であるが、サイト希釈系と同様に計算が可能である。また、計算結果の解析過程で必要となった三角関数型の格子歪みのある二次元サイト希釈系の計算も加えて行っている。
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| 今後の研究の推進方策 |
これまでの二次元希釈系の計算を様々な濃度や鎖間相互作用の系で行い、反強磁性長距離秩序の発現を示す磁化の濃度依存性や鎖間相互作用依存性を詳細に調べ、発現のメカニズムを明らかにする。鎖間相互作用が小さくなると、量子モンテカルロ法で絶対零度とみなせる温度が低くなり、さらに大規模な計算が必要となるので、並列計算を効率的に実行する。以上の研究と並行して、格子の自由度を量子的に扱ったフォノン系において、有効ハミルトニアンの導出と量子モンテカルロ法のプログラミングを進める。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
計画と同性能の計算機が予定より安価に購入することができたことと、論文出版の時期が予定より遅れ、出版費用が残ったためである。
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| 次年度使用額の使用計画 |
次年度の予算と合わせて、もう一台計算機を購入し、解析に用いる数値計算データを増やす。また、今年度に出版できなかった論文の出版費用に使用する。
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