原子と輻射場が結合している系における動的カシミール効果のダイナミクスの詳細を解析するために、原子の量子準位に対応する離散的エネルギーをもつ状態と輻射場に対応する連続的エネルギーをもつ状態が結合した系について、全体を一つの量子系として扱い、その複素固有値問題を解析することにより、次の結果を得た。 周期的外場によって系を駆動したときに系のダイナミクスがどのように変化するかを調べるために、フロケハミルトニアンの複素固有値問題の解析を行った。その結果、離散的量子準位として1準位を想定したもっとも簡単な系においても、この系の複素固有値は多彩な変化を示し、固有値の値は周期的外場のパラメータによって実数にも複素数にもなり、それらの間の転移点に対応する例外点がそのスペクトルに現れることを明らかにした。また、離散的量子準位として2準位系を考え、そこで現れる量子干渉効果に対して、連続状態との結合がどのように影響を及ぼすかについて解析を行った。その結果、動力学的局在と呼ばれる量子干渉効果の結果として現れる現象は、連続状態の影響によってすぐに消滅するのではなく、局在条件の変化という形でその影響が現れることがわかった。 また、周期外場と強く結合する系の動的カシミール効果を議論するために、回転波近似を用いずに仮想遷移の効果までを取り入れたモデルを用いて、外場駆動原子輻射場強結合系の理論の構築に着手した。現在までに、時間に依存する系の固有モードを解析的に求めることに成功しており、今後の議論の土台となる基礎理論が得られた。 さらに、空間的な境界の効果を議論するため、連続状態を構成する量子状態が空間的に境界をもつ場合について、離散状態がこの連続状態と結合した系のダイナミクスを解析し、この系で純粋な非マルコフ的動力学が現れることを示した。
|