研究実績の概要 |
今年度は, 双極子相互作用する2次元Lenard-Jones粒子模型を構築し, 圧力を一定に保つ分子動力学法シミュレーションを行った. 3通りの条件(詳細は後述)の下でシミュレーションを行った結果, 双極子相互作用の増大(系の温度低下とほぼ同等)とともに系は, (1)正方格子から長方格子, (2)正方格子から斜方格子, (3)正方格子から長方格子を経て斜方格子, の構造相転移を示し, 構造相転移を示すシンプルな模型を構築するという本研究の目的の一つを達成することができた. 以下に, 単純な2次元模型がどのような機構によって, 上記の構造相転移を示すかについての説明を行う. 今回構築した模型は2つの正方格子(A格子とB格子)が互いの面心に入るようにB格子の粒子半径をA格子の粒子半径の半分となるように調節した. このため, 双極子相互作用が弱い場合には, 圧力によって正方格子が安定となる. また各粒子が持つ双極子の大きさは, B格子の双極子がA格子のものより小さく設定した. このため, 双極子相互作用を増やすと, A格子の双極子が先に秩序化を示す. 双極子秩序はとなり合うA格子の方向に揃い, 双極子秩序の方向へ格子が伸びるので, 双極子の相転移とともに上記(1)の構造相転移を示す. 一方, B格子の双極子が十分に大きい場合には, A格子の双極子秩序は, B格子の方へ引き寄せられる. その結果, 双極子秩序はA格子に対して斜め方向へ発達し, 双極子の秩序化とともに, 格子は正方格子から斜方格子へと構造相転移(上記(3))を示す. B格子の双極子の大きさが上記(1)と(3)の中間である場合, 双極子相互作用の増大とともに, まず長方格子の構造相転移を示し, その後さらに双極子相互作用を増大させると, B格子上の双極子も揃い始め, その結果, A格子の双極子秩序がB格子の方向へ傾き, 長方格子から斜方格子への構造相転移が現れる.
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