研究成果の概要 |
双極子相互作用する2次元Lennard-Jones(LJ)粒子模型を構築し, 圧力一定の分子動力学シミュレーションを行った。シミュレーション結果から, 構築した模型は格子を構成する粒子の双極子の大きさの組み合わせにより, いくつかの構造相転移を示すことが明らかとなり, 構造相転移を示すシンプルな模型を構築するという本研究の目的の一つを達成することができた。また, LJ粒子のダイナミクスの解析に用いたウェーブレット解析を2次元スピン系のスナップショット(瞬間的配置)の解析に適用し, スナップショットのデータの圧縮に伴うエントロピー生成とスピン系の臨界普遍性に深い関わりが存在することを示した.
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究では, 双極子を持つLennard-Jones粒子を規則的に並べた単純な模型を構築し, この単純な模型を用いて構造相転移の基礎研究が可能となることを示した。温度や圧力の変化に伴って物質の結晶構造が変化する構造相転移の本質を理解することは, 物質科学の基礎/応用研究において重要な課題の一つであるが, 本研究で構築された単純な模型を用いることで, 様々な系の研究が手頃な計算量で実施することが可能となった。 また, スピン系のスナップショットの画像圧縮によるエントロピー生成と臨界普遍性に関する研究により, 統計物理学と画像情報との間に深い関わりがあることを示した。
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