研究課題
研究代表者は、グローバーの繰り返し型量子探索アルゴリズムに基づいた多重位相整合方式の提案や単一位相整合方式の探索振幅の解析解の導出など、量子探索問題の分野で有意義な実績を従来から挙げてきた。これらの成果は、あくまでも繰り返し探索という枠内で探索効率の改良を目的としたものである。これに対して、本研究課題の目的は、量子探索アルゴリズムの探索効率問題に対して新しい観点からの数学的アプローチを提案するものである。昨年度までに、グローバーの繰り返し型量子探索アルゴリズムの位相整合方式に基づき、繰り返し探索演算の加法分解形式を導出し、探索負荷を実質的に軽減する加法的ユニタリー変換の構築を行った。この形式では、k回探索演算が一回探索演算と位相変換演算(0回演算)の加法形式で表現される。この加法分解スキームは数学的観点からも有意義であり、本研究では、具体的に、2量子ビットと3量子ビット探索空間の場合に、加法的ユニタリー変換から探索の量子ゲートを得る方法を明らかにした。これらの成果は、論文としてジャーナルに発表した。残された問題は、繰り返し型探索演算の加法分解スキームに基づいた並列処理アルゴリズムの構築である。昨年度までに既にその基本スキームを構築したが、探索の成功確率を100%にするユニタリー変換の導出が未解決となり、その解決を本最終年度に持ち越した。本年度は、上記の未解決の問題を最終的に解決した。構築したスキームは、「アンサンブル・ベクトル」、「再構成ユニタリー変換」、探索処理の中間段階での「測定」及び再構成ユニタリー変換で得られた状態を探索状態に変換する「ユニタリー変換」という基本要素からなる。これは、一回探索演算と位相変換演算のランダムな集合からk回探索状態の加法分解形式を組み立てるもので斬新な発想である。この成果は、論文としてジャーナルに投稿予定である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件)
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