研究課題
本研究計画は量子トンネル効果中の測定理論を確立し、量子状態推定の方法およびそれらの実験的実装方法を理論的に提案することを目標としている。概念的に親和性の高い「弱測定」をトンネル粒子の測定に適用させようとするものである。そして、その物理的意味やこれまでの理論体系との関係性に関して議論し、弱測定の測定結果である「弱値」を用いた記述により量子トンネル効果でも適用可能な測定理論を確立し、実際に測定理論を構築するのに具体的な物理系で解析することが必須であると考えている。本年度の研究業績として、量子トンネル効果を導入する前の量子情報理論との対応関係の議論を行った。量子状態推定の観点において推定精度の観点ではこれまで議論はされてきたものの、最適な量子推定を実装するためには技術的な困難さが立ちはかどっていた。そこで、本年度の研究により、量子状態推定のスキームに対して弱測定を応用した際の利点について議論を行い、その考察を行ってきた。本年度得られた成果はプレプリントとして arXiv:1611.00149 論文を提出しており、現在、査読付学術論文誌において査読中である。継続プロジェクトとしての論文を現在準備しており、論文の大枠に関しては書き上げている。現在はその推敲作業中であり、得られた知見は弱測定の文脈のみならず、実験しやすさのような尺度が導入できる可能性を示唆するものとなっている。しかし、本年度においては議論が収集しておらず、結果として纏めることの出来る段階ではないと判断する。
2: おおむね順調に進展している
本年度はおおむね順調に研究は推移した要因として、事務支援員を雇用し、研究に割くことのできる時間を確保できたことにある。一方で本年度末で現職の雇用任期を迎えてしまうため、本対応をしていると本年度の後期は思い通りの計画では進まなかった。
量子状態推定と弱測定の関係を見直すというところから始まり、これを逐次測定の系へと応用することが必要である。そして、量子トンネル効果との関連づけを行うことにより、本研究計画の目標を完遂するための下準備は揃ったことになる。今後は異動に伴い、当初の研究計画通り研究が進まなくなる可能性が高く、また研究エフォート率を下げる必要があるため、その対応策として、現在得られている結果を前倒しして発表することが必要になると考えている。
次年度の所属変更が決まったため。
次年度の研究環境を整備するための簡易PCの購入にあてる予定である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 備考 (1件)
Scientific Reports
巻: 6 ページ: 25655
10.1038/srep25655
http://qm.ims.ac.jp/