(1) イジングモデルにおけるクラスター非平衡緩和過程の磁化のスケーリング型を無限レンジモデルで厳密に導出した。この場合の時間依存性は冪的だが、この過程で得られる相関長の時間発展方程式が有限次元系でも成立すると仮定すると、むしろ引き伸ばされた指数関数型の時間依存性が一般的であり、冪的な時間依存性は時間発展方程式の係数の時間依存性が特定の冪の場合に限られ、無限レンジモデルの厳密解はこの条件を満たしている。これらの新たな知見と、規格化された相関長が引き伸ばされた指数緩和の指数σと補助的緩和指数ρの2変数でスケーリングされることの現象論的導出という前年度の知見を合わせ、2次元・3次元系(引き伸ばされた指数緩和を示す)及び4次元・無限レンジ系(冪的緩和を示す)において数値的にも確認し、論文として刊行した。 (2) 磁化のBinder比をσとρの2変数でスケーリングし、指数σが急激に変化する温度領域から臨界温度を推定する手法をまとめた投稿論文は、査読者に理解されなかった。臨界点直上のみで成立するスケーリングのズレから臨界点を推定する手法には限界があるということだが、量子相転移への応用もこの手法に依っていたので、この方向での発展は中断している。その代わりに、相転移の制御パラメータ(古典スピン系の場合は温度)変化に応じた物理量の振舞をスケーリングする、相補的な手法「温度スケーリング」を開発した。局所更新アルゴリズムの非平衡緩和では、動的スケーリングの関数型からこのようなスケーリングは提唱されていたが、クラスターアルゴリズムでは提唱されていなかった。またこの新手法は、局所更新アルゴリズムの非平衡緩和でも従来手法よりも良いスケーリング性質を示す。
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