研究課題/領域番号 |
16K05497
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
越野 和樹 東京医科歯科大学, 教養部, 准教授 (90332311)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 超伝導回路QED / 量子光学 / 量子制御 / 非相反素子 |
研究実績の概要 |
昨年度の研究で,伝播マイクロ波光子量子ビットを超伝導量子ビットに反射させることにより,決定論的に動作する三種類の二量子ビットゲート(Identity, root SWAP, SWAP)を実現する方法を理論的に開発した.反射後の光子を他の超伝導量子ビットへと誘導することができれば,空間的に離れた超伝導量子ビット間に量子ゲートをかけることができ,分散的量子計算への道が拓ける.そのような光学回路の構築にはアイソレータやサーキュレータといった非相反素子が必須であるが,現在用いられているフェライトを内蔵した素子には,サイズが大きい,挿入損失が大きい,といった欠点がある.それらを克服すべく,本年度はゲブハルド・リュッケンシュタイン型ホッピングに基づく,小型のオンチップ型サーキュレータを理論提案した.提案したデバイスは複数(3個以上)のマイクロ波共振器群とそれらの結合器から成っており,結合器に適切な周波数・パワーのドライブ波を印加することにより,共振器間にゲブハルド・リュッケンシュタイン型ホッピングをもたらすことができる.この共振器群は線形の分散関係を示し,入射マイクロ波の非相反光学応答をもたらす.この共振器群に半無限の導波路を結合させると,広いバンド幅を有するオンチップ型のマイクロ波サーキュレーターとして動作する.バンド幅の共振器数依存性などを調べた結果,特に3回の回転対称性を有する6共振器+3導波路系がサーキュレーターとして最適の性質を示すことを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
伝播マイクロ波光子による超伝導量子ビットの量子力学的接続に必須のデバイスであるサーキュレータを,チップ上で実装する方法について,理論面から筋道をつけることができたため.
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今後の研究の推進方策 |
前年度から本年度にかけて提案した,単一マイクロ波光子-超伝導量子ビット間の二量子ゲート・空間的に離れた量子ビット間の量子もつれ生成・チップ上サーキュレータ,などの諸現象を,実験グループと協力して実証してゆく.このためには,周波数の揃った複数のΛ型原子を準備する必要があるが,ドライブ光による「その場制御」でこれを達成する方法について理論面から検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:計画していた国際学会への参加を見合わせたため,旅費の支出が想定よりも少なく済んだ. 使用計画:本年度の旅費として使用する.
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