研究実績の概要 |
本研究は光ビーム断面内のエネルギーの流れを測定する新しい手法の提案・実証を行うことを目的としている。ビーム断面内の運動量分布や角運動量分布を簡便かつ精度よく測定する手法を提案し、興味深い運動量分布や角運動量分布を持つ光ビームの測定を行う。令和元年度は本手法の弱測定としての側面を強調する実験に取り組み、弱値の増幅を確認した。角運動量測定の精度向上にも引き続き取り組み、理論とのよい一致をみた。さらに関連の深い手法による光の空間モード操作に着目し、高次モード操作の理論を構築し実験により確認した。 期間全体の実績を以下にまとめる。 本測定手法は空間シア干渉系により光の運動量や角運動量の空間分布を直接得るものである。測定対象として自由空間伝搬中の光渦の反転等を選定し、回転シア干渉計による角運動量分布測定に注力することとした。干渉計の設計とアライメント手法の確立を進めつつ、本測定法を弱測定の一種として定式化し、方位角方向の位相勾配が弱値に相当することを明らかにした[宮本他、日本物理学会 (2019)]。角運動量分布の精密測定および弱値の増幅のそれぞれを実験で示し、結果を論文にまとめつつある。さらに最近、他研究グループにより空間シアと運動量シアを組み合わせることによる光渦の発生が報告されたが、この現象についても高次モードの操作について理論および実験により明らかにした [Miyamoto et al., ICOAM (2019) 他]。 これらに加えて測定対象となる複雑な構造をもつ光ビームの生成・制御およびこれらの技術の応用に取り組んだ。特に重要な成果として非一様な偏光状態を持つ光ビームの生成[Reddy et al., Opt. Express (2017)]、および動径方向のモード関数制御[Choudhary et al., Opt. Lett. (2018)]がある。
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