研究課題
本研究は、今まで制御することが難しかった超高強度レーザーと薄膜との相互作用において重要な役割を果たす、超高強度電場の生成を時間・空間的に積極的に制御を試みることが目的である。2017年度に取得されたJ-KARENレーザーシステムと銀の薄膜との相互作用の結果を、ハイドロシミュレーションとParticle In Cellシミュレーションによるハイブリッドシミュレーションを行い、レーザーの、特に時間波形の及ぼす加速電場への影響の結果を論文投稿し、現在査読中である。さらに、本年度は、超高強度レーザーシステムと薄膜との相互作用を決定する、メインパルス近傍10psにおける時間波形を成形し、薄膜との相互作用を試みた。QST関西研にあるJ-KARENレーザーシステムを使用し、ステンレスターゲット5ミクロン上に5x1021Wcm-2で45度の角度から集光し、ターゲットの裏面方向に加速される陽子、炭素、酸素のそれぞれの価数のイオンのエネルギースペクトルをトムソンパラボラにて計測した。その結果、時間位相の3次分散を変化させることで加速される炭素の価数、及びエネルギーが如実に変化することが分かった。現在、変化させた時間波形によって、形成された加速電場がどのように変化し、計測データを説明できるのかをデータ解析、及びシミュレーションから検討中である。
1: 当初の計画以上に進展している
今年度において、昨年度の実績報告時には執筆中だった、2017年度に取得されたデータを基にしたレーザー時間波形と加速されるイオンの結果の論文の投稿を行い、現在査読中の状態にまでこぎつけたこと。さらに、2018年度には、上記のように積極的に時間波形を成形することで、加速されたイオンの価数毎のスペクトルの違いが如実に表れたデータの取得に成功し、現在詳細について解析を進めているが、これらのデータは超高強度レーザーを用いたイオン加速実験において、医療応用などの魅力的な応用先があるにもかかわらず、未だにそれに必要な陽子線、および炭素線の最高エネルギーが到達できない理由を示している。すなわち、超高強度レーザーのパルスの立ち上がり成分が既に加速電場を形成し、それらによってメインパルスがターゲット上に加速電場を生成する前に、陽子線や炭素線が加速されてしまって、ターゲットから離れてしまい、陽子線や炭素線の効率的な加速が行われていないために、陽子線や炭素線の加速エネルギーが延びない、という重要な実験的事実と知見をもたらした。このような知見は、超高強度レーザー業界においてはほぼ知られていないことであり、ピーク強度さえあげれば加速イオンのエネルギーが延びると考えられているため、波及効果は非常に大きい。
2017年度に取得したデータによる論文を通すこと、さらに、2018年度に取得したデータの解析を進め、効率の良い加速を行うために必要な時間波形を明らかにすることを行う予定である。ターゲットの種類によって、最適な時間波形は変化することが期待されるため、ターゲットの厚みの依存性、かつターゲットの原子番号依存性について、実験的なデータを取得し、それらを包括的に説明するモデルを構築する予定である。
今年度、非常に有意義なデータが取得できたため、その解析を引き続き来年度行うため。
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Optics Express
巻: 25 ページ: 29501 --29511
10.1364/OE.25.029501
Optics Letters
巻: 43 ページ: 2595-2598
10.1364/OL.43.002595