前年度までに我々はレギュラーランダムグラフ(RRG)上で感染モデルとしてよく知られているsusceptible-infected-susceptible(SIS)感染モデルの一つの拡張であるsusceptible-weakened-susceptible-infected-susceptible(SWSIS)感染モデルの振る舞いについて調べ,SISモデルとの類似点として(1)転移点が初期感染者割合ρに依存すること,相違点として(2)ρの値に関わらず不連続転移になることを示した。その後,W→Sチャネルの回復率μを絞っていく振る舞いから,より統一的な理解が得られることがわかり,研究期間を延長してその振る舞いを調べた。 まず,平均場方程式よりその転移の定性的なメカニズムを解析したところ,μ→0でフローの縮退が起こることにより不連続転移が連続転移に移行することがわかった。また,臨界指数も通常のβ=1となり,この場合だけ特別の値であることを示した。μ>0ではW→Sチャネルが臨界性に寄与していることと対照的である。つぎにRRG上のモンテカルロシミュレーションで実際にそのような振る舞いを示すことを確かめた。さらに,対応するAMEを用いて数値計算を行いそれがシミュレーションと合致する結果を示すこと,およびμ空間を加えた転移の様子を表す相図を作ることに成功した。また,二次元および三次元正方格子上でのSWSISモデルでも同様な連続転移→不連続転移の振る舞いをすることがわかり今後の解析が期待される。 今年度は解析の進展のためなどの理由により事業期間延長して研究を行った。論文発表のとりまとめの時期に新型コロナウィルス対応などで発表準備が年度内にできなかったり学会そのものが中止になったなどのアクシデントがあり,成果発表ができていないが,上記の成果は今後学会発表及び学術誌投稿を行うべく準備中を進めている。
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