研究課題
Stokes則と同じような構造を持つ粘性における式として、Einsteinの関係式がある。このEinsteinの関係式からのずれを微視的な観点から研究した。特に、大きな溶質近傍の2成分溶媒の溶媒和効果に注目し、溶媒粒子のダイナミックスを記述する微視的な方程式を摂動展開することにより、粘性の理論を定式化した。摂動展開のパラメータは溶質粒子と溶媒粒子の大きさの比とした。この摂動理論により、溶質粒子の周りの溶媒粒子の密度分布を考慮して、流体力学方程式と溶質表面の境界条件を得た。境界条件は、溶質粒子と2成分の溶媒粒子の間の2種類の動径分布関数から与えられる。この理論は、溶液の粘性の絶対値を計算するのではなく、溶質が含まれない純溶媒(この場合は2成分)の粘性と溶質が含まれる溶液全体の粘性との差を計算する。もっと詳しく言えば、溶液全体の粘性を溶質の体積分率で展開し、1次の係数eta1を計算する。この理論を剛体球系に応用した。つまり、大きさの違う2成分の剛体球溶媒にそのどちらよりも大きい剛体球溶質を沈め、eta1を計算した。その結果、大きい方の剛体球溶媒の大きさを大きくすると、eta1はそれに伴って大きくなる。それは、溶質近傍の大きい方の溶媒球の質量密度が、大きさによって上がることが原因だと考えられる。さらに、大きい方の剛体溶媒の濃度を変えると、その大きさにより、複雑な振る舞いが見られた。たとえば、溶媒同士の大きさの比が1:6の場合は、充填率を0.1まで上げるとeta1は単純に増加するが、1:2の場合は単純に減少する。これは、2種類の溶媒の溶質近傍の質量密度のバランスで決まることが明らかになった。
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Journal of the Physical Society of Japan
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The Journal of Chemical Physics
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EPL (Europhysics Letters)
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