研究課題/領域番号 |
16K05513
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
畝山 多加志 金沢大学, 自然システム学系, 助教 (10524720)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 発泡体 / セル構造 / 画像解析 / 圧縮 |
研究実績の概要 |
既に圧縮特性を調べている中程度に発泡した低密度ポリエチレン発泡体に対して、セル構造を系統的に変化させる方法を確立し、その構造と圧縮特性を関連付けるためのモデルの考察を行った。 まず、発泡に用いる化学発泡剤を溶媒に溶かして再結晶することで粗大な結晶粒子を作成した。粗大粒子を分級することでサイズのそろった粗大な化学発泡剤を調製した。これと微細な粉末状の化学発泡剤を併用することで発泡体中の孔のサイズ分布をコントロールすることが可能となった。作成した発泡体のセル構造の不均一性は顕微鏡を用いた画像解析によって定量化した。孔のサイズの分布関数を求める手法を確立した。 また、孔のサイズ分布をコントロールした発泡体に対して圧縮試験を行うことで、孔のサイズ分布、すなわちセル構造の不均一性と圧縮特性の関係を調べた。孔のサイズがより不均一になるほどセルの崩壊(セルを構成する壁面の弾性座屈)にともなう応力の上昇の程度が上がることがわかった。これは我々の既に提案している理論モデルの予測とも一致する結果である。さらに、孔のサイズ分布からセルの強度の分布を求め、理論モデルと組み合わせることで画像解析データからの圧縮挙動の再構成を試みた。再構成された圧縮挙動は直接測定した圧縮挙動と類似した振る舞いを示しており、適当なフィッティングを行うことで半定量的に圧縮挙動を再構成できることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた発泡体のマトリックスとセル構造の制御のうち、比較的困難と思われるセル構造の制御を試み、セル構造をコントロールして発泡する手法を確立することに成功した。さらに、そのようにして作成した発泡体中のセル構造の不均一性を定量的に表現するための基本的な手法を十分に確立することができた。また、圧縮挙動を直接測定することで、発泡体の圧縮特性とセル構造の不均一性との相関を調べることに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度までの研究で得られたセル構造の不均一性と圧縮挙動をよく再現できるような粗視化モデルの構築を試みる。既に簡易的な理論モデルを用いた孔のサイズ分布からの圧縮挙動の再構成には成功しているが、簡易的な理論モデルでは無視されている効果がいくつかあり、より高精度な再構成を行うためのモデルの構築とシミュレーションを行う。また、今年度確立した孔のサイズのコントロール手法をより改良し、さらに幅広い孔のサイズ分布を持つ発泡体やマトリックスを変化した発泡体を作成する。
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