研究実績の概要 |
前年度までに行ってきたセル構造の系統的に異なる中程度に発泡したポリエチレン発泡体について、圧縮試験により得られる力学挙動とセル構造の関係をより詳細に理解するため、モデル構築を引き続き行った。これまでは1次元的に近似していたモデルを2,3次元にも適用できるようにするよう拡張した。1次元モデルではセルの強度分布の情報は反映できるものの、個々のセル間の相互作用が無視される形となってしまうため、実験データを再現することを目指す際に必ずしも適切なモデルとは言えない。2,3 次元では隣接するセル同士のひずみが相互に関係するため、あるセルが大きく変形すると周囲のセルも巻き込まれるような形で変形される。連続場記述を使ってこの様な系を定式化し、現在、そのモデルに基づいたシミュレーションコードの作成を行っている。 また、発泡体をセル構造が連結されたある種のネットワークとみなすと、より高精度なモデル化にはネットワーク構造をよく表現できシミュレーションに適した理論モデルを開発することが必要であると考えられる。そこで、まずは理想的なネットワークとして動的・過渡的に結合が組変わるネットワークを統計力学的に適切な形で取り扱えるモデルを構築し、それに基づくシミュレーションコードを開発した。これは各種ネットワーク構造とその力学物性・レオロジー的性質を統一的に理解するための基礎的手法となるものと期待できる。例えば、応用例として、からみあった高分子溶融体のレオロジー的性質を非常に単純な記述で半定量的に満足のいく形で再現することに成功している。
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