研究課題
我々は、研究したい系(溶液に取り囲まれた複数の生体高分子系;以下、生体高分子系と呼ぶ)と多次元仮想空間に定義された系(実際には存在しない系;仮想系)との間に相互作用を仮定し、仮想系の運動を制御することにより生体高分子系の構造探索を加速する手法を開発した(論文発表済)。そして、この手法とアンブレラ・サンプリング法を統合して V-AUS 方と呼ばれる手法を開発した(論文発表済)。本研究課題では、当初、V-AUS法から得られたデータを使い、構造変化に伴う速度定数の算出を目的とした。そのために、速度定数を求める理論式を定式化した。しかし、V-AUSをベースにした場合、系に常にバイアスがかかり続けることに起因して、小さな構造変化に伴う速度定数しか正確に得られないことが研究の過程で判明した。そこで、系にバイアスをかけることなく構造変化を加速する方法(mD-VcMD)を開発した(論文発表済)。こうすることで、系の運動がバイアスに乱されることなく、より大きな構造変化に伴う速度定数を見積もることが可能になる。そこで、我々は大きく複雑な系(膜に埋もれた GPCR に20残基のペプチド性リガンドが結合・解離する運動)にmD-VcMDを適用した(論文発表済)。さらに、手法を効率化するために AI 手法の一つである genetic algorithm (GA) を取り入れ、この手法を GA-based mD-VcMD と名付けた。異なる三つの複合体系に適用して自由エネルギー地形を求めた(結果を3本の論文として投稿中)。これらの系の特徴は、リセプターである蛋白質のリガンド結合領域がクレフトの形状を持っており、クレフトが開閉することでリガンドの結合・解離が起きるということである。以上のように、本研究課題は、速度定数を求めるという目的からは若干研究方向がずれたが、強力な構造探索法の開発へとつながった。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 5件)
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