平成30年度は、代表者らが開発した粗視化モデルであるDomain Motion Enhanced(DoME)モデルを基にして複数の反応状態間を結ぶmulti-basinモデルの構築と、パラメータ決定手法の開発を行った。 DoMEモデルはX線結晶構造解析などで得られた構造からドメイン運動の情報を抽出し、ドメイン運動を能くサンプル可能である。しかし、膜タンパク質や4つ以上のドメインを持つ大規模なタンパク質においては、構造変化に関わる相互作用を追加するmicro-mixing法では記述できない構造変化がみられる。そこで、より複雑な相互作用の交代を記述可能なmacro-mixing法の導入を行った。macro-mixin法では、複数のポテンシャル面を自由エネルギー差とポテンシャル面の交差点の値をパラメータとして繋ぐ方法である。複雑な相互作用の記述が可能である一方、パラメータの決定手法は困難であった。そこで、初期パラメータで得られたシミュレーションデータから異なるパラメータでの自由エネルギー面を再見積もりする手法を開発した。これにより意図するmacro-mixing法のパラメータを決定することが可能となった。この手法を用いて、micro-mixing法で構造変化を解析した水溶性タンパク質での解析を行い、同様に二つの状態を能くサンプルできることを確認した。更に他の水溶性タンパク質でも同様の解析を行い、状態間の遷移をサンプルできることを確認した。この結果に関しては、現在論文を作成中である。また、前年度に開発したレアサンプリング手法と組み合わせ、代表的な膜輸送タンパク質に対しても適用を行い、構造変化の解析も行った。
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