研究課題/領域番号 |
16K05527
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研究機関 | 公益財団法人高輝度光科学研究センター |
研究代表者 |
城地 保昌 公益財団法人高輝度光科学研究センター, XFEL利用研究推進室, 主幹研究員 (30360415)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | コヒーレント回折イメージング / 位相回復 / X線レーザー / 実験データ解析 / 構造モデリング |
研究実績の概要 |
生命現象を理解するには、構成要素である生体粒子が機能を発現している状態の構造を捉えることが不可欠である。超短パルスのX線レーザーを利用したコヒーレントX線回折イメージングは、10ナノメートルからマイクロメートルのスケールで起こる生命現象を解き明かすポテンシャルをもつ。本研究では、その実現のために、X線レーザー回折で得られる2次元スナップショットから、生体粒子構造をモデリングし、機能に関わる構造情報を抽出する方法論を開発し、X線自由電子レーザー施設SACLAの実験データ解析に適用することを目的とする。
平成29年度は、平成28年度の研究成果に基づき、X線回折パターンの位相回復結果(2次元電子密度)に対して疎視化粒子を初期配置し、その粒子配置を実験データに合うように精密化する手法の開発を行った。具体的には、疎視化粒子モデルより計算したX線回折パターンと実験値との差を最小化するように粒子配置を最適化する。計算機シミュレーションで生成したX線回折パターンに対して、その有効性を確認したところ、ノイズ等が大きい場合には、特にX線照射方向の粒子位置の最適化が難しいことが分かった。今後は、生体粒子に対する既知情報の制約を加えた最適化計算を検討している。
また、本手法では、疎視化粒子の初期配置に結果が依存する。そこで、初期配置の確度を向上させるために、位相回復結果である2次元電子密度を精密化する手法の開発も行った。具体的には、ベイズ統計を利用することで、X線回折パターンに対して、最も確からしい2次元電子密度を精密化する。計算機シミュレーションを援用することにより、この2次元電子密度精密化法が有効であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計算機シミュレーションを援用して、2次元回折パターンから生体粒子の構造をモデリングする手法の開発が順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度までは、計算機シミュレーションで生成した回折パターンに対して、生体粒子の構造をモデリングする手法を開発してきた。今後は、現在分かっているX線照射方向の配置最適化困難の問題を、生体粒子の既知情報に基づく制約を加える等の工夫をしながら解決していく。さらに、実際の実験データに対して、開発した手法を適用し、必要に応じて改良していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) ほぼ当初計画通りに使用できたが、「その他」として計上していた経費の使用がなかったため。
(使用計画) 次年度使用額約5万円を成果発表を効果的に行うために使用する。その他は当初計画通りに使用する。
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